商業の復活/商業ルネサンス
11~12世紀、遠隔地貿易が盛んになり、ヨーロッパの商業は復興、都市の繁栄が始まった。この動きを商業ルネサンスとも言う。
商業ルネサンス
カロリング朝フランク王国の時代以来、イスラームの西地中海進出によって貿易が途絶えたため、ヨーロッパの経済は衰え、農業中心の社会に後退した。次の11~12世紀には、イスラーム勢力の後退、ノルマン人の侵攻の終了による平和の回復と、三圃制農業の普及などによる農業生産力の向上、人口増加などによって衰えていた地中海貿易が再び活発となった。特に十字軍運動に刺激されて、十字軍の出港地となった北イタリアのヴェネツィアを中心とした諸都市の商人は東方貿易(レヴァント貿易)に乗りだし、香辛料などの貴重な商品をもたらした。北イタリア商人はフランドル地方を中心とした北海に面した北ヨーロッパ地域の諸都市とも交易を行うようになり、遠隔地貿易が活発となった。また両者を結ぶ内陸交通路の発達とシャンパーニュ大市などの内陸諸都市が発展、ヨーロッパの貨幣経済が再び活発になるとともに商業が復興、それに伴って都市人口が増加し、都市も復活した。このような経済史上の動きを「商業ルネサンス(商業の復活)」と呼んだのは20世紀初頭のベルギーの歴史家アンリ=ピレンヌであった。<ピレンヌ『中世ヨーロッパ経済史』1930年> → 西ヨーロッパ中世世界の変容
中世都市の勃興
11世紀ごろから、新しい中世都市が形成されてくるが、実際の都市人口はどのぐらいであったか、不明なことが多い。中世末期の14~15世紀の資料では次のような数字がある。
10万以上 パリ(24万)・ヴェネツィア(19万)
6~10万 フィレンツェ・ジェノヴァ・ミラノ・ガン・ブリュージュ
3~5万 ブリュッセル・ケルン・リューベック・ロンドン
<鯖田豊之『世界の歴史9・ヨーロッパ中世』河出書房新社>