印刷 | 通常画面に戻る |

エル=シド

11世紀末、スペインの国土回復時代の英雄。コルネイユの『ル=シッド』のモデルとなった。

 国土回復運動(レコンキスタ)時代のスペインで、その武勇が言い伝えられた英雄。本名はロドリゴ=ディアズで、ビバール出身の騎士。11世紀後半、カスティリヤ王のアルフォンソ6世に仕えていたが王との確執から一時追放され、イスラーム側に傭兵として仕えた。その武勇を讃えたイスラーム教徒が彼を勇気ある者の意味のシッドと呼んだので、スペイン人は彼をエル=シドと言うようになった。後に王と和解し、おりから始まったムラービト朝のムーア人の侵攻に対し、1094年にバレンシアを奪回して名声を高めた。彼を主人公とした『わがシドの歌』は、中世の武勲詩の代表的なものとされ、17世紀フランスの劇作家コルネイユもこれを題材に悲劇『ル=シッド』を創作している。その他、スペインでのは国民的英雄として多くの文学作品や映画になっている。<参考『物語スペインの歴史-人物編』岩根圀和 中公新書 2004>

参考

 映画『エル・シド』 1961年、チャールトン=ヘストン、ソフィア=ローレン主演。監督はアンソニー=マン。娯楽映画ではあるが、キリスト教徒とイスラーム教徒がなぜ憎み合うのか、と疑問を投げかけるような場面もある。またムラービト朝のイスラーム部隊がバレンシアを攻撃する場面は一見の価値あり。