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資本主義的世界経済

15~16世紀の大航海時代、ヨーロッパに始まった経済活動の変化は、産業革命を期に資本主義社会を形成した。

 15世紀後半から16世紀にかけて成立した「資本主義的世界経済」とはどのような概念か、それを提唱しているウォーラーステインの説明を見てみよう。ウォーラーステインに拠れば、1150年頃から1300年頃にかけてのヨーロッパでは封建的な生産関係の枠内でではあったが、地理的にも、商業面でも、人口の点でも発展が認められた。1300年頃から1450年頃にかけては、地理的にも商業的にも、人口の点でも、逆に収縮の方向に向かった。この収縮は、政治面でも戦争と農民叛乱という「危機」を生んだ。
 この「封建制の危機」は、長期趨勢の変化(1000年にわたる封建的生産様式のもとで経済的余剰の収奪が続いた結果、生産性が低下したこと)と短期の循環性危機(景気循環の一局面)と気候の悪化(による生産性の低下と疫病の蔓延)の「複合体」である。この複合体の強力な圧力のもと、深刻な社会変化が起こり、ヨーロッパで経済的余剰の新たな収奪形態として生み出されたのが資本主義的「世界経済」である。
 それは、「貢納」(古代の世界帝国の場合はこの形態をとった)や「封建地代」(ヨーロッパの中世に見られた)の形態をとる直接的収奪ではなく、はじめは農業の、ついで工業の高い生産性を前提としたもっと効率のよい余剰収奪形態である。それはまた、世界市場のメカニズムに依存してはいるものの、国家機構という「人工的」(つまり非市場的な)手段を援用するものである。このような資本主義的「世界経済」の確立にとって、決定的な意味を持つ条件が三つあった。すなわち、当該世界の地理的規模の拡大と「世界経済」が生み出す多様な生産物、「世界経済」を構成する各地域に適した多様な労働管理の方法の開発、さらに(来るべき資本主義的「世界経済」の中核国家となるはずの)比較的強力な国家機構の創出、がそれである。(それを最初に実現したのがポルトガルであった。)<I.ウォーラーステイン、川北稔訳『近代世界システムⅠ』1974 岩波現代選書 p.40~42より要約>
 → 近代世界システム  資本主義社会 
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書籍案内

I.ウォーラーステイン、川北稔訳
『近代世界システムⅠ』
1974 岩波書店