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中国国民党一全大会

1924年、中国国民党で、孫文が主導し、国民革命をすすめるため開催した大会。三民主義に基づく国家建設と共に、国民党の改組、共産党との国共合作を決定した。

 1924年1月、広州で開催された、中国国民党の第1回全国代表大会の略称。中国国民党の孫文は、北京の軍閥政府を倒し、帝国主義列強による植民地化を阻止して中国の国民的な統一をなしとげる国民革命を目ざし、コミンテルンの要請を受けて中国共産党との第1次国共合作(統一戦線)に踏み切ることを決定した。孫文はこの大会で「連ソ・容共・扶助工農(新三民主義)」の三大政策を提起し、採決された。これによって中国国民党は共産党員を国民党員として受け入れる「国民党改組」が行われた。

資料 中国国民党第一回全国代表大会宣言

 1924年1月23日に採択された大会宣言の主要部分を要約すると次のようになる。
一、中国の現状 中国の革命は1894年に始まり、1900年に盛んとなり、1911年に成功し、君主制を覆した。しかし、いわゆる民国政府はすでに軍閥の操るところとなり、軍閥がこれを利用して列強と結びつき、自らの基盤を固めている。列強もまたこれを利用し、大借款を与えて軍事費にあてさせ、中国の内乱を収拾のつかない状態に追いやりながら利権をもぎ取り、勢力範囲を占拠している。
二、国民党の主義 国民党の主義とは何か? それは孫総理が提唱された三民主義にほかならない。
  1. 民族主義 民族主義の意義は、いかなる階級にとっても、帝国主義の侵略を免れるところにある。民族主義がなければ、産業界は列強の経済的圧迫を受け、生産を発展させることが出来ない。民族主義がなければ、帝国主義に依存した軍閥や内外の資本家のため、労働者は生きていくことすらおぼつかなくなる。
  2. 民権主義 国民党の民権主義には間接民主制と直接民主制とがあり、国民は選挙権のほか、創制(法令制定発議)、複決(国民投票)、(官吏)罷免の諸権利も保障される。民主制の仕組みは憲法に規定され、孫文先生創案の五権分立、すなわち立法、司法、行政、考試(公務員の任免関連)、監察の五権分立が原則となる。……
  3. 民生主義 国民党の民生主義として最も重要な原則は、土地に対する権利を均等化すること(原語は「平均地権」)ならびに資本の活動に規制を加えること(原語は「節制資本」)の二点である。……
三 国民党の政綱(以下抜粋)
甲 対外政策
  1. ①すべての不平等条約、たとえば外国人租借地、領事裁判権、外国人の関税管理権、および中国国内で外国人が行使する政治権力であって中国の主権を侵害する一切の規定等を撤廃し、改めて相互の主権を尊重する条約を締結しなければならない。
  2. ④中国が借り入れた外債は、中国が政治上および実業上損失を受けない範囲内で、これを保証し、償還する。
乙 対内政策
  1. ②各省の人民は自ら(省の)憲法を定め省長を選ぶことができる。
  2. ④普通選挙制を実施し、所有資産額を基準とした制限選挙を改める。
  3. ⑥人民の集会、結社、言論、出版、居住、進行の完全な自由を、権利として確定する。
  4. ⑨田賦(従来からの農地税)・土地税の法定額を厳格に定め、一切の余分な徴税行為をやめさせ、厘金(内地通行税)などの類も全廃する。
  5. ⑫工場法を制定し労働者の生活を改善するとともに、労働団体の存続を保障し、その発展を援助する。
  6. ⑭教育の普及に力を入れる。
  7. ⑯企業のうち、独占的な性質を持つもの……、例を挙げれば銀行、鉄道、汽船業などについては国家の経営管理の下に置くこととする。
<『世界史史料10』歴史学研究会編 2006 岩波新書 p.110-111>
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