上海協力機構/SCO
2001年、ロシア、中国、キルギス、カザフスタン、タジキスタン、ウズベキスタンの中央アジアと隣接する6ヵ国で発足した国際協力機構。2015年にインド、パキスタンが加盟、さらに2023年にイラン、24年にベラルーシが参加し、ユーラシア大陸諸国を包摂する国際機構となっている。本部は北京に置かれている。
上海協力機構(SCO)の発足
上海協力機構 Shanghai Cooperation Organization 略称SCO は、2001年に、ロシア・中国の両大国に、中央アジアの4ヵ国(キルギス、カザフスタン、タジキスタン、ウズベキスタン)が加盟して発足した、資源開発などの経済協力とともに国際テロへの対応などで共同歩調をとることをめざす国際組織である。最近はイン・パキスタンなども加盟し、ユーラシア大陸諸国を結ぶ、あらたな地域経済協力、集団安全保障機構として注目されている。上海協力機構の前身は、1996年に、中国・ロシア・カザフスタン・キルギス・タジキスタンの、一般に「上海ファイブ」といわれる5ヵ国が結成した、上海ファイブ体制である。これは、冷戦終結後、中央アジアで高まってきたイスラーム原理主義の台頭による、民族分離主義や反世俗主義の運動を脅威と感じた諸国の利害が一致したことによって発足した。具体的には、国境地帯における不測の軍事衝突を防止し、国境を画定し、兵力の削減を図ることをめざした。1998年からは議題が広がり、「あらゆる民族分離主義、極端な宗教勢力、テロ活動」と戦うことが「アルマアタ声明」に明記された。
この上海ファイブにウズベキスタンが加わって2001年6月15日に発足したのが上海協力機構であり、設立宣言には「互信、互利、平等、協商、文明の多様性の尊重、共同の発展」を原則とする地域的国際組織であると定義され、参加各国元首は「テロリズム・分離主義・イスラーム極端主義の取り締まりに関する上海公約」に調印した。組織は年に一度のサミット(国家元首)・政府首脳会議(首相)・外相会議・国防相会議などの会議体制が整えられ、2002年には「上海協力機構憲章」が調印された。事務局は2003年から北京に置かれ、中国の指導力が強まっている。<王柯『多民族国家 中国』2005 岩波新書 p.203-205 >
上海協力機構のねらい
この五ヵ国に共通するテロの脅威とは何か。それは中国の新疆ウイグル自治区のウイグル人の独立運動(東トルキスタン独立運動)である。ウイグル人は新疆だけでなく中央アジアに広く居住し、彼らが独立した民族国家を建設することは、この五ヵ国にとっては脅威なのだ。また、中央アジアのイスラーム教徒はほぼスンナ派だが、アフガニスタンやイランにも隣接しており、イスラーム原理主義が浸透する畏れは十分にある。こうして、テロリズム・分離主義・イスラーム極端主義の脅威三点セットがこれらの国々を和解させ、長く燻っていた国境問題を妥協的に解決させたのだった。上海協力機構の拡大
2015年にインド、パキスタンが同時に加盟した。宗教的な対立、カシミール問題などで対立する二国が、同一の地域協力機構に加わったことは世界的にも注目を浴びた。また大国インドとパキスタンの加盟によって、ユーラシア大陸の5分の3に達し、加盟国総人口は30億を超え、世界人口の半分近くを占めることとなった<Wikipedia による>。さらに2023年にはイランが、24年にベラルーシが加盟し、正式加盟国は10ヵ国となっている。・オブザーバー参加国は、モンゴル、アフガニスタンの二ヵ国。
・対話パートナーとして、スリランカ、トルコ、アゼルバイジャン、アルメニア、カンボジア、ネパール、エジプト、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、ミャンマー、クウェート、モルディブ、バーレーンの14ヵ国が加わっている。
・また参加申請国にはオブザーバーとしてバングラデシュ、東ティモール、アルジェリア。対話パートナーとしてシリア、イスラエル、イラクが名乗りを上げている。(2025年8月現在)