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字喃(チュノム)

13世紀の陳朝で生まれたベトナム独自の文字。次の胡朝でも奨励されたが、定着しなかった。

字喃の例。
字喃の例
『図解アジア文字入門』
河出書房新社 p.82
 13世紀、ベトナム陳朝の時代に、漢字をもとにしてつくられたベトナム独自の文字。字喃の音がチュー=ノム。「チュー」は「字」の意味であるが、「ノム」はベトナム人が自国を「南国」とよぶところからきたという説と、話し言葉を意味する「ノム」からきたという説がある。中国の文明の影響の強かったベトナムで、民族意識が強まってきたことを示すもので、ベトナム語を表記するために作られた文字であるが、漢字をもとにして新たな派生文字も作られた。11世紀に始まるが、13世紀の陳朝でベトナム語で唱われた詩をチュノムで書き記す国語詩が流行した。陳朝の次の胡朝もチュノムの使用を奨励した。しかし、字喃は公用文字にされることはなく、20世紀にはローマ字を改造した正書法が確立して、使われなくなった。左は字喃(チュノム)の例で、ベトナムの歴史書『大南国史演歌』の冒頭の部分。

補足 現在のベトナムの文字

 ベトナム独自の文字としてつくられたのがチュノムであるが、現在は使われていない。チュノムは習得が難しく、一般には広がらなかった。ベトナムにやってきたイエズス会宣教師たちは慣れ親しんだラテン文字でベトナム語を書き表そうとした。1651年にはフランス人宣教師ローズがラテン文字によるベトナム語表記の基準を作った。19世紀後半にフランス領になってからラテン文字表記が広まり、新聞や小説もラテン文字で表現されるようになった。1945年独立したとき、ホー=チ=ミン大統領は識字率向上のためラテン文字の使用を推進することを宣言、公式文字となった。現在は複雑なベトナム語の母音を表記するための補助記号を導入したベトナム正書法(チュー・クォック・ングー、「国語の字」の意味)が制定されている。<『図説・アジア文字入門』河出書房新社 p.102>
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第2章2節 イ.インド・中国文化の受容