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一神教

宗教の中で、多神教に対して、唯一絶対の神のみを信仰する宗教形態。ユダヤ教、キリスト教、イスラーム教がそれにあたる。

 宗教を神観念のあり方から分類すると、一神教と多神教に分かれる。一神教は、唯一絶対の神の存在しか認めないもので、ユダヤ教キリスト教イスラーム教などのセム語族系の民族にみられる宗教である。
 多神教は複数、また多数の神々を崇拝するもので、原始的な部族神や氏神の信仰のほか、ギリシア・ローマの神話、ヒンドゥー教、仏教、道教などがそれにあたる。日本の神道も多神教である。一神教的な世界観と、多神教的な世界観はそれぞれことなった国家観と結びつき、それが歴史の特質の背景となると言う見方もある。<参照 本村凌二『多神教と一神教-古代地中海世界の宗教ドラマ-』2005 岩波新書>

一神教革命

 ユダヤ教は、神は唯一であることを主張し、唯一なる神は天地万物を創造したのであって、他に神は存在しないと信じた。神は人類の祖であるアダムを創り、この世の人びとは総てその子孫であるとする。そのユダヤ教の中から生まれたキリスト教も厳格な一神教である。3世紀の末にローマ帝国の政治の中心が東方に移った頃、そこには多くのキリスト教徒がいた。キリスト教徒やユダヤ教徒はローマの神殿に祀られている神々は偶像に過ぎないとして、崇拝を拒んだ。そのためローマ帝国はキリスト教徒を迫害したが、何よりも強力な軍事力を必要としたローマ帝国が東方で将兵を得ようとすればキリスト教徒に頼らざるを得なかった。4世紀になるとローマ帝国はキリスト教徒と妥協してその存在を認め、やがて皇帝の主導でキリスト教の教義を整えていった。
 380年、ローマ帝国は神々を祀る宗教を異教として禁じた。神々を祀っていたアテナイのアクロポリスやエジプトのルクソールなどの神殿は破壊され、廃墟となり、神々を表現した彫刻や絵は壊された。地中海世界で数千年にわたって神々と共存していた人間の社会は大きく変化した。この変化を「一神教革命」という。
イスラームの一神教 一神教革命はローマ帝国の権力を背景に行われたが、帝国の領域外では、キリスト教徒やユダヤ教徒は他の宗教を禁じる力はなかった。それでも帝国の範囲外のイラクやアラビアにも広がっていった。そして一神教革命があった4世紀から200年ほど後のアラビアで、純粋な一神教であるイスラーム教が勃興することとなる。イスラームとは、ユダヤ教キリスト教がいう唯一にして天地万物を創造した神への信仰である。イスラームでは神をアッラーというが、それは『聖書』の神と同じ存在である。一種強革命をより徹底したしたかたちですすめたのがイスラームということになる。<後藤明『イスラーム世界史』2001 角川ソフィア文庫 p.48-50>

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