ディクタトル/独裁官
古代ローマ共和政のもとで非常時の国家大権を与えられた官職。
前5世紀後半に始まる、ローマ共和政のもとで非常時に元老院から国家大権を与えられた機関。元老院が2名の執政官の中から1名を選び、任期は6ヶ月以内で、再任されないと決められていた。非常時とは、主に北方からのガリア人などの異民族の侵入の危機の場合であった。貴族と平民の対立を終結させた前3世紀前半のホルテンシウスなどが独裁官の例であり、任期は守られていおり、独裁者として権力を行使したわけではなかった。
独裁官の変質
公職としての独裁官は、第2次ポエニ戦争の以後は任命されていない。ローマ共和政の末期、前1世紀ごろになると、前82年にスラはディクタトルと名乗り、終身その地位にあったが、彼は内乱で政敵を倒し、軍事力で権力をにぎった文字通り独裁者であり、かつての公職者としてのディクタトルとは全く性格が異なっている。さらに前44年にはカエサルは終身ディクタトル兼インペラトル(最高軍司令官)との官職を名のっており、帝政の前段階となったことを示している。