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ウパニシャッド/奥義書

ヴェーダの一つ「ウパニシャッド」に基づく哲学体系。バラモンの師から弟子に伝えられる奥義書の意味。その宇宙観、梵我一如、輪廻転生、解脱などの概念を思索することをウパニシャッド哲学という。

 古代インドの後期ヴェーダ時代時代(前1000~500年)の文献の一つで、『奥義書』と訳される。ウパニシャッドとは「傍らに座る」という意味であり、バラモンの師から弟子に伝承された奥義を意味し、文献としては前500年頃までに編纂されたと言われる。つまり、ウパニシャッドとはヴェーダ文献のひとつであり、「近くに座ること」すなわち「秘密の教え」を意味する語である。

ウパニシャッド哲学

 バラモン教が形式的になり、バラモンがたんに祭祀を司る役割だけになっていることを批判し、内面的な思索を重視し真理の探究をすすめる動きが出てきた。それがウパニシャッド哲学であり、ヴェーダの本来の姿である宇宙の根元について思惟し、普遍的な真実、不滅なものを追求した。ウパニシャッド哲学によると宇宙の根源であるブラフマン(梵)と人間の本質であるアートマン(我)とを考え、この両者が究極的に同一であることを認識すること(梵我一如)が真理の把握であり、その真理を知覚することによって輪廻の業(ごう)、すなわち一切の苦悩を逃れて解脱に達することができると考えている。これは世界最古の深い哲学的思索としてよく知られている。
 後期ヴェーダ時代に現れたこの内面的思索の重視と、業・輪廻の死生観は、次の時代にバラモン教に対する二つの宗教-仏教ジャイナ教-を誕生させる。<山崎元一『古代インドの文明と社会』中央公論社版世界の歴史3 p.84 などによる>

Episode インドには墓がない

インドには古ウパニシャッド以来(仏教の登場以前に)輪廻転生の思想が広く民衆にゆきわたり、死者は七・七=四十九日以内に五種または六種の生命体(サットヴァ、サッタ、衆生しゅじょうまたは有情うじょうと訳す)のなにものかに生まれ変わってこの世界に戻ると信じられており、一般人は遺体を火葬のあと川に流してしまって、ことさら祀ることをせず、そのため墓は設けず、存在しない。<三枝充悳『仏教入門』1990 岩波新書 p.42>
 四十九日の法要や火葬の風習は仏教以前のインドのウパニシャッドの時代に起源があるのですね。仏教が定着すると、仏陀や聖者の遺骨を納める仏塔(ストゥーパ)が造られることになる。