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張飛

劉備の義兄弟となった『三国志演義』の豪傑。関羽とともに劉備を支えた。

 三国時代を建国した劉備の盟友。関羽とともに劉備と義兄弟のちぎりをかわした豪傑。『三国志演義』でも活躍する。
 「五虎将軍」といわれた劉備に従う五人の猛将で、関羽に次ぐナンバーツーが張飛である。劉備と同郷の涿郡の出身、関羽と違って知性とはほとんど無縁、ひたすら力と情のみの人物であるが、その八方破れな生き様が庶民の絶大な人気を博している。ただし、関羽と同じように『三国志演義』に出てくるその話のほとんどはフィクションであり、歴史的事実では無い。

張飛の最後

 歴史的事実ではないと言いながら、ついつい三国志演義の話が知りたくなるのが人情です。ここは勉強の箸休めで、張飛の最後を覗いてみよう。
 張飛は関羽の死を聞いて血の涙を流して毎日号泣した。酒を呑んで気を紛らわそうとするが、酔うほどに荒れて、配下の者を鞭打ち、果ては打ち殺してしまうこともあった。劉備も、諸葛孔明でさえ「真の敵は魏です」といって止めるのも聞かず、呉に対する報復に立ちたい。張飛は涙ながらに「俺一人でも弔い合戦をやる」と訴え、ついに二人は呉討伐を敢行することになる。劉備は「お前は身近な者を鞭で打ったりするが、それは危ない」と忠告して別れた。自陣に戻った張飛は「三日以内に全軍白装束を整え、出発だ」と命令するが、これは無理な注文。末将の范疆・張達が猶予を乞うと、張飛は二人を50回ずつ鞭打ち「遅れたら首をはねるぞ」と叱り飛ばす。「どうせ殺されるなら」と相談した二人は泥酔して寝込んだ張飛のところにいくと、目を見開いているので一瞬たじろいだが、雷のようないびきが聞こえた。張飛はもともとまぶたを閉じないで寝る質だったのだ。二人は張飛の腹を刺して殺し、首を切って出奔、呉に投降した。<渡辺精二『三国志人物事典』講談社 p.601>
 いかに英雄豪傑でも、これでは部下がついてこないでしょう。フィクションとは言え、劉備の蜀が長持ちしなかった理由が現れているようです。
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書籍案内

渡辺精二
『三国志人物事典』
1989 講談社

正確には『三国志演義人物事典』とすべもので、正史『三国志』の人物事典ではない。歴史上の人物が、フィクションではどう描かれているかを知る上で便利。なお講談社学術文庫版上中下にもなっている。