印刷 | 通常画面に戻る |

タバリー

アッバース朝時代のイラン系イスラーム神学者で、歴史学者でもあった。ムハンマドの言行を集め、年代記を作成、後世の歴史書に大きな影響を与えた。

 アル=タバリー(838~923)は9世紀後半に活躍したイラン系神学者、歴史学者。コーランの注釈書『タフシール』、年代記的世界史『預言者と諸王の歴史』を著した。カスピ海南部のタバリスタンに生まれ、7歳でコーランを暗記し、9歳でハディースを自由に書くことができたという。<佐藤次高『イスラーム世界の興隆』世界の歴史8 中央公論社 1997 p.167>

歴史家タバリー

 アル=タバリーの名声を支えているのは、かれの著しく入念に仕上げられ、かつ正確な歴史書『預言者と諸王の歴史』と、『コーラン』の注釈書とである。かれはこの注釈書で、聖霊の注釈となる伝承(ハディース)の、もっとも初期のまたもっとも多数の集成をおこない、その注釈書は後の『コーラン』注釈者の典拠となった。またかれの著した画期的な通史は、アラビア語では最初の完全なもので、後世の歴史家の典拠となった。
 大部分のイスラーム教徒の歴史家と同じように、アル=タバリーは事件を年代記的に配列し、それらをヒジュラ暦で年表にしている。かれの歴史は、世界の創造に始まり、ヒジュラ暦302年(西暦915年)までを扱っている。かれは、かれの時代に入手可能な文献を利用する他に、旅行中に集めた口伝えの伝承や、バグダード、その他の知的中心地で学んだシェイフ(権威者)たちの講義模様、歴史編纂のデータを入手した。

Episode 40年間、毎日40枚、歴史を書き続ける

(引用)知識を求めるかれの旅はペルシア、アル=イラーク、シリア、エジプトに及んだ。かれはあるときは、パンを買うために上着を売らなければならなかった。アル=タバリの学問に対する勤勉と熱意は、かれが40年間、毎日40枚書き続けた、という有名な伝説からうかがわれよう。<ヒッティ/岩永博訳『アラブの歴史』下 講談社学術文庫 p.76-77>
印 刷
印刷画面へ
書籍案内

ヒッティ/岩永博訳
『アラブの歴史 下』
講談社学術文庫 1983