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岩のドーム

イェルサレムのモスク。神殿の丘のあり、イスラーム教の聖地の一つとされている。正統カリフ第二代のウマルがムハンマドの昇天伝説の地を聖域と定め、ウマイヤ朝のカリフ・アブド=アルマリクが692年にモスクを建設した。

 イェルサレムにある、イスラーム教のモスク。「ウマル=モスク」ともいう。イェルサレム旧市街の「神殿の丘」(ユダヤ教の聖地ヤハウェ神殿跡でもある)にあり、ドームの中央にある岩は、ムハンマドが天国に旅立った場所とされ、イスラーム教ではメッカ、メディナに次いで第三の聖地とされている。
 638年、アラブのイスラーム軍に包囲され、イェルサレムが降伏したとき、入城した第二代カリフのウマルはみずからこの地を訪れ、土中から聖なる岩を見つけ出して礼拝した。ムスリム(イスラーム教徒)はこの地こそムハンマドが天馬に乗って天に昇った場所だと信じた。ウマルは荒廃していたその地を整備して礼拝等を建設するように命じ、やがて3000人もの信徒を収容できるモスクが建設された。ムスリムが「ウマルのモスク」と呼んだ礼拝堂の内部の巨岩は「天地創造の巨岩」と信じられ、その後、ウマイヤ朝カリフのアブド=アルマリクの命令によって、692年にこの岩を覆うモスクが建設された。その後何度か改修されているが、イスラーム世界最古の建造物として貴重である。8角形のプランを持ち一辺の長さは20m、ドームの高さは35m。黄金にかがやくドームの屋根が、ひときわ目立っている。

Episode ムハンマドの「夜の旅」

 「コーラン」第17章1節に見られるムスリムの伝承によれば、ムハンマドはある夜、メッカからイェルサレムまで、天馬ブラークに乗って旅をし、そこから天にのぼって神の声を聞き、その玉座の前にひれ伏したという。天に昇るときに足をかけた石が、ドームに覆われている聖石であり、その表面にはムハンマドの足跡が残っていると信じられている。この伝承によってイェルサレムはイスラーム教徒にとって、メッカ、メディナにつぐ第三の聖地と定められた。アブド=アルマリクによる岩のドームの建設は、カリフの権威を高めるだけでなく、信仰の新しい中心を生み出す役割も果たした。<佐藤次高『イスラーム世界の興隆』世界の歴史8 中央公論社 p.114>