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小中華思想

清に代わり朝鮮王朝が儒教の伝統を維持しているとの思想。朝鮮の事大主義のもととなった。

 朝鮮の儒者が、朝鮮を中国の正統な儒教の伝統を継承する国と考え、清朝や周辺国、西洋を夷狄とする思想。中国古来の中華思想の一種の変形といえる。朝鮮王朝(李朝)は、明との文化的な関係が深く、ともに儒教思想(特に朱子学)を根幹とする社会をつくってきたが、1637年に女真の清の侵攻を受けてそれに服属し、1644年には明が滅亡して清が中国全土を支配することとなった。
 こうして朝鮮は清を宗主国とする立場となったが、儒者はあくまで清朝は女真という夷狄が建てた王朝であると考え、「大中華」であった明が滅亡した後は、朝鮮のみが儒教の伝統を継承する「小中華」であると考えるようになった。政治的・外交的には清に屈服したが、文化的にはより高度な伝統を維持しているという自負であった。その考えでは、清は夷狄であり、日本は倭夷、西洋は洋夷であるとされ、19世紀の朝鮮で力を付ける鎖国思想、事大主義へと結びついた。日本などにならって朝鮮の近代化を図ろうとした独立党に対して、保守派を形成した事大党の思想的な根拠となる。
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