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スコット

19世紀ロマン派の作家でスコットランド出身。『アイヴァンホー』などの歴史小説で人気が高い。

 ウォルター=スコット(1771-1832)は19世紀初頭の英語世界最大の歴史小説家、詩人でロマン主義を代表する一人。詩の分野ではバイロンの名声に及ばなかったが、読者大衆には絶大な人気があった。スコットランドのエディンバラ出身の弁護士というエリートだが、1歳半で小児マヒにかかり7歳まで田舎で療養する間、スコットランドの昔話や歴史に親しんだ。代表作は物語詩『湖上の麗人』、スコットランドのイングランドとの戦いを題材にした『ウェイヴァリ』、サクソン人とノルマン人の抗争を描いた『アイヴァンホー』、実在の嬰児殺しの罪に問われた娘を主人公とした『ミトロジアンの心臓』などがある。またスコットは歴史考証家としても知られ、キルトやタータン=チェックがスコットランドの国民的な衣装として知られるように努めた。政治的な立場は、イングランドによるスコットランド併合(1707年)を支持し、イギリス王室への忠誠を通じてスコットランドの繁栄を期待した。

Episode 初のベストセラー作家

 1814年にはじまった『ウェイヴァリ』小説シリーズは出版史上、初の近代的な意味での「ベストセラー」の登場といわれている。エディンバラで刷られた本は船積みされてロンドンに送られるが、風波でおくれることがあると読者はやきもきし、ロンドン港に入って二、三時間もたたぬうちに、待ちかまえた首都のあらゆる本屋の窓や戸口に大きく入荷が広告された。週刊文芸誌は、ライバル誌より少しでも早く書評を出すため、高くつく馬車便で本を取り寄せた。その後も、『ロブ・ロイ』、『アイヴァンホー』など立て続けにベストセラーを量産した。のちに共同出資者の出版業者の破産による巨額の負債を背負い込んだときには、「この右手で返済する」と言って超人的な執筆を続け、完済した。<高橋哲雄『スコットランド 歴史を歩く』2004 岩波新書 p.143> 
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