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ポピュリズム

現代政治の一形態である、大衆動員型の政治のあり方を言う。20世紀のラテンアメリカで典型的に見られ、21世紀になって欧米でも顕著な政治的動向となっている。

20世紀ラテンアメリカ

 世界恐慌以降の危機的状況の中で、各国の対応に二つの異なった対応が現れた。ひとつは独裁政権による強権的政治による危機打開の道であり、もう一つの道がポピュリズムである。ポピュリズムとは「社会主義と民族主義を旗印にして国民大衆を体制の中に取り込みむ上からの大衆動員型政治」と言うことが出来る。20世紀のラテンアメリカでは前者の独裁政権としてはキューバのバティスタ政権などがあり、後者のポピュリズムの例としてはメキシコのカルデナス政権、ブラジルのヴァルガス政権、アルゼンチンペロン政権が典型的なものである。<国本伊代『概説ラテンアメリカ史』改訂新版 2001 新評論 p.209>

ポピュリズムの定義

 主に政治学の分野でのポピュリズムの定義には、大まかに言って次の二種類がある。
  • 第一の定義 固定的な支持基盤を超え、幅広く国民に直接訴える政治スタイルをポピュリズムと捉える。手法としては政党や議会を迂回して有権者に直接訴える政治手法や、国民に訴える巧みなレトリックを駆使して変革を訴えるカリスマ的な政治スタイルが採られる。霊としては日本の中曽根政権、イギリスのサッチャー政権、フランスのサルコジ政権、イタリアのベルルスコーニ政権などがある。
  • 第二の定義 「人民」の立場から既成政治やエリートを批判する政治運動をポピュリズムと捉える。言い換えれば、政治変革を求める勢力が、既成の権力構造やエリート層(および社会の支配的な価値観)を批判し、「人民」に訴えてその主張の実現を目指す運動とされる。例としてはフランスの国民戦線、オーストリアの自由党などがポピュリスト政党である。
 ただし、この二つの定義は、前者はリーダーの政治戦略・政治手法に注目するのに対し、後者は政治運動のであることに重点を置くもので、どちらかが正しいという排他的な主張ではなく,分析対象の違いと言った相互に補完し合う見方である。<水島治郎『ポピュリズムとは何か』2016 中公新書 p.6-8>

21世紀の欧米のポピュリズム

 2010年代後半、ポピュリズムが世界各国の政治状況を揺るがしている。これらのポピュリズムの多くは、エリート批判を中心とする「下」からの運動に支えられており、「エリートと人民」を新たな対立軸として作り出すことに成功し、選挙を通じて合法的に権力を獲得したり、政策を大きく転換することに成功している。その傾向は、2016年6月のイギリスのEU離脱を巡る国民投票、同年11月のアメリカの大統領選挙でのトランプの当選で露わになった。その背景には次のような状況が考えられる。
(引用)グローバル化やヨーロッパ統合を一方的に進め、移民に「寛容」な政治経済エリートに対し、緊縮財政や産業構造の空洞化などの痛みを一方的に負わされ、疎外感を味わう人々の反感が、現在のポピュリズムを支える有力な基盤となったのである。ポピュリズム勢力は、既成政治から見捨てられた人々の守り手を任じ、自らを「真の民主主義」の担い手と称しつつ、エリート層を既得権益にすがる存在として断罪することで、「下」の強い支持を獲得している。<水島治郎『前掲書』 p.8-9>
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書籍案内

水島治郎
『ポピュリズムとは何か』
2016 中公新書