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ラッセル=アインシュタイン宣言

1955年、哲学者ラッセルと物理学者アインシュタイン二名が発表した核戦争絶滅の訴え。多くの科学者が賛同し、世界的な核廃絶運動の契機となった。

 1955年4月11日、哲学者ラッセルと物理学者アインシュタインの二人は、核戦争絶滅を訴える呼びかけを行った。アインシュタインは同月18日に死去し、その遺書となった。1955年7月9日、マックス=ボルン、ジュリオ=キュリー、湯川秀樹などノーベル賞受賞者9名も連名で署名し、発表された。これが「ラッセル=アインシュタイン宣言」と言われている。

核戦争廃絶の訴え

 前年3月のアメリカによるビキニ環礁での水素爆弾は、大量破壊兵器の発達が人類という生物の種を絶滅させる危機であるととらえ、しかも核兵器の使用による一瞬間の死は少数であっても、大多数はじりじりと病気と肉体崩壊に苦しみながら絶滅するであろうと警告した。ここにその最後の一節と、決議の部分を掲載する。
(引用)私たちの前途には――もし私たちが選べば――幸福や知識、知恵のたえまない進歩が広がっています。私たちはその代わりに、自分たちの争いを忘れられないからといって、死を選ぶのでしょうか?私たちは人類の一員として、同じ人類に対して訴えます。あなたが人間であること、それだけを心に留めて、他のことは忘れてください。それができれば、新たな楽園へと向かう道が開かれます。もしそれができなければ、あなたがたの前途にあるのは、全世界的な死の危険です。
決議:私たちはこの会議に、そしてこの会議を通じて、世界の科学者、および一般の人々に対して、以下の決議に賛同するよう呼びかけます。
「私たちは、将来起こり得るいかなる世界戦争においても核兵器は必ず使用されるであろうという事実、そして、そのような兵器が人類の存続を脅かしているという事実に鑑み、世界の諸政府に対し、世界戦争によっては自分たちの目的を遂げることはできないと認識し、それを公に認めることを強く要請する。また、それゆえに私たちは、世界の諸政府に対し、彼らの間のあらゆる紛争問題の解決のために平和的な手段を見いだすことを強く要請する。」
日本文全訳は日本パグウォッシュ会議ホームページ新和訳「ラッセル=アインシュタイン」にある。
 この訴えは世界的に大きな反響を呼び、アインシュタインの没後、1957年からは世界の科学者が核廃絶に向けて話し合う国際会議としてパグウォッシュ会議が開催されるなど、世界的な核兵器廃絶運動の出発点となった。
 注目すべき点は、この声明が「核兵器」の廃絶に留まらず「あらゆる紛争問題の解決のために平和的な手段を見出すこと」、つまり戦争による問題解決をしないことを要請していることであり、その部分は「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」という日本国憲法に通底している。
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