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ゼノン

ヘレニズム期の哲学者。キプロス生まれ前300年頃アテネで学塾を開き、理性による感情の制御した不動心を理想とする実践哲学を説き、ストア派の祖といわれる。ストア哲学はローマ時代の思想に大きな影響を及ぼした。

ストア派の祖

 ゼノン Zenon (前335年頃~前263年頃)はヘレニズム時代の前3世紀にアテネで活動した哲学者。ゼノンがアテネのアゴラに面するストア(列柱)の下で哲学を講じたので、その学派はストア派といわれるようになった。
 彼は、理性(ロゴス)によって感情(パトス)を制して、不動心(アパティア)に達することを理想とし、確固たる自己の確立をめざした。ストア派の哲学はローマに伝えられ、ローマ帝国時代にエピクテトスセネカマルクス=アウレリウス=アントニヌス(五賢帝の一人)などが現れた。
注意 もう一人のゼノン ギリシアの哲学者には、もう一人のゼノンがいる。こちらのゼノンは前5世紀ごろ、南イタリアのエレアで活動し、純粋な論理によって真理を探究することを説いた。例えば運動では、論理上は「アキレウスは永遠に亀に追いつけない」や「飛んでいる矢は動かない」ということになる。また、後の論理学の弁証法を創始したとも言われている。こちらを「エレアのゼノン」というのに対して、その死後百年後に現れたストア派の祖は「キプロスのゼノン」という。

キプロスのゼノン

 ストア学派の祖、ゼノンはキプロス島の生まれで商人であったが、フェニキアからペイライエウス港(アテネの外港)に染料を運ぶ途中で難破して、アテネに漂着し、クセノフォンの著作をつうじてソクラテスと哲学とに出会ったという。伝承によるとアテネに滞在している間、残された最後の船が荷を積んだまま遭難したとつたえ聞いて、自分を「すり切れた外套」へとみちびいた偶然の女神に感謝したという。「すり切れた外套」とは当時の哲学者のいわば制服であり、ゼノンが最も影響を受けたキュニコス派(犬儒学派)、とりわけシノペのディオゲネスに相応しい姿であった。<熊野純彦『西洋哲学史』2006 岩波新書 p.120>
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