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フスタート

642年、エジプトに建設されたイスラーム教団のミスル(軍営都市)。10世紀のファーティマ朝時代に近郊に新都カイロが建設されたため衰えた。

 イスラーム教団の正統カリフ時代に盛んに展開された聖戦(ジハード)の歳に、各地に設けられたミスル(軍営都市)の一つ。第2代カリフのウマルの641年、アラブ軍がアレクサンドリアのビザンツ軍を攻撃して降伏させ、エジプトを征服しイスラーム化した。その翌642年にナイル下流の右岸に建設したミスル(軍営都市)がフスタートである。
 この都市は次のウマイヤ朝、アッバース朝時代を通じ、エジプトにおけるイスラームの拠点として、政治・軍事・経済の中心地であった。10世紀の中頃、西のチュニジアからファーティマ朝が進出してエジプトを制圧、972年にフスタートの北に新都カイロを建設した。それ以来、カイロはイスラーム世界の中心都市として成長して行き、代わってフスタートは衰え、古カイロともいわれるようになった。1168年、ファーティマ朝のカリフは十字軍との戦いに際し、十字軍に占領されることを防ぐために自らの手でフスタートを焼き払った。現在は遺跡が残るのみである。
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