バンヤン/天路歴程
17世紀後半、イギリスのピューリタン革命期の文学者。熱心なピューリタン信仰から『天路歴程』を著した。
バンヤン John Bunyan(1628-88) は、 17世紀のイギリスの、イギリス革命の時期の王政復古期に活躍した宗教家・文学者。貧しい鋳掛屋の子として生まれ、父業をついだが、ピューリタン革命に際して、クロムウェルの率いる議会軍に徴兵されて、兵士となった。除隊後、ピューリタンの信仰にめざめ、聖書に親しみ、牧師となった。王政復古期に非国教徒として逮捕されて、1660年から12年間獄中にあり、その間、『溢るる恩寵』(1666)等を書き、75年に再投獄された。獄中で主著『天路歴程』を構想し、その第1部を1678年、第2部を1684年に発表した。
天路歴程
『天路歴程』 The Pilgrim's Progress ピルグリムとは、巡礼のこと。1620年に宗教弾圧を避けて、アメリカ新大陸に渡ったピューリタンもピルグリム・ファーザーズと言われた。ピューリタン革命に参加し、王政復古期に獄中で『天路歴程』を書いたバンヤンも熱心なピューリタンであった。『天路歴程』の第一部(1678年刊)では主人公クリスチャンが、救いを求めて巡り歩き、第二部(1684年刊)では残された妻が天の都にいたる物語。ピューリタンの純粋な信仰心を歌い上げ、王政復古期の国教会によって弾圧されたピューリタン(清教徒)に熱烈に支持された。当時、聖書に次いでよく読まれた書物となったという。ミルトンの『失楽園』と並んでイギリス・ピューリタン文学の傑作とされている。以下は、内村鑑三によるバンヤンの紹介。(引用)ジョン・バンヤンという人はチットモ学問のない人でありました。・・・彼は申しました。「私はプラトンの本もまたアリストテレスの本も読んだことはない。ただ、イエス・キリストの恩恵にあずかった憐れな罪人であるから、ただわが思うそのままを書くのである」といって、"Pilgrim's Progress"(『天路歴程』)という有名なる本を書いた。・・・フランス人、テーヌは・・・(バンヤンの英文は)最も純粋な英語である・・・と申しました。<内村鑑三『後世への最大遺物・デンマルク国の話』1946 岩波文庫 p.50-52 バンヤンの経歴については鈴木俊郎氏の註を参照した>