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金ぴか時代

南北戦争後の1860~70年代、アメリカ経済が発展した時期の金銭崇拝の風潮を揶揄したことば。

 アメリカの産業革命が進行した、南北戦争後の1860年代後半から70年代の時期に、鉄道業で進んでいた企業の吸収合併は、他のどの産業の分野でも急速に進展した。ダーウィンの進化論が、社会に適用され、(適者生存という)ソーシャル・ダーヴィニズムの考えが時代の潮流となった。当時の共和党政権は産業界に自由放任の態度をとったので、カルテルトラストなどをおしすすめた独占資本家たちは、政界に対しても介入し、いつでもポケットに議員を10人ぐらい入れて歩いている、と豪語した。また、南北戦争後の議会は産業界を保護するため、くり返し関税率の引き上げを行った。アメリカは保護貿易主義に立っていたのであり、自由貿易の国になるのは第二次世界大戦からのことに過ぎない。
 こうして産業界は急激に膨張し、政界は腐敗して汚職が続発する。南北戦争の後半に北軍の司令官となったため、戦後一躍国民的ヒーローに祭りあげられたグラントは、1869年から77年までに二期大統領の職についたが、彼の周辺は汚職にまみれ、今では史上最低の大統領と評価されている。彼の在任中の1873年マーク・トウェインはチャールズ・ウォーナーとの共著で『金ピカ時代』(Gilded Age)という小説を発表し、議員やロビイストを描きいた。このタイトルは、南北戦争から世紀末までの物質万能、趣味俗悪、政治腐敗などを象徴するようになった。<猿谷要『物語アメリカ史』中公新書 p.109-110>