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原人

左がトゥルカナ=ボーイ、右がルーシーの骨格模型(東京国立科学博物館展示)。
左がトゥルカナ=ボーイ、
右がルーシーの骨格模型
(東京国立科学博物館展示)。

猿人に次ぐ化石人類の段階。ホモ=エレクトゥス。出現時期には240万年前と、180万年前の見解の違いがある。アフリカで進化し、ユーラシア大陸に広がった。

 地質学上の更新世にあたる約180万年前に、猿人に続いて出現した化石人類で脳容積を増大させたホモ属に含まれ、学名はホモ=エレクトゥス(直立した人、の意味)という。その化石は猿人と異なり、アフリカから出てヨーロッパからアジアまでの旧大陸にに広く分布しており、ジャワ原人北京原人ハイデルベルク人などがその例である。おそらくアフリカで猿人段階から進化を遂げた一部が、脳容積を増大させる契機を掴み、「火の使用」を獲得することによって、生息範囲を広げることができたものと思われる。

山川詳説世界史の記述変更

 2013年度から使用される最新版世界史教科書には、原人の出現時期に関する記述に大きな違いが見られる。最も普及率が高い山川出版社の『詳説世界史B』では、「やがて約240万年前、アフリカに原人が登場した。ホモ=ハビリスやホモ=エレクトゥス(ジャワ原人・北京原人など)がそれに属し、なかでもホモ=エレクトゥスは、ハンドアックスなどの改良された打製石器と火を使用して狩猟・採集生活を営んだ。」と書いている。山川の詳説世界史の昨年までの記述は、「やがて約180万年前に原人が登場した」であった。この変化は、ホモ=ハビリスを猿人とするか、原人とするかの違いから起こった。旧版ではホモ=ハビリスは「猿人」とされていたのだ。ホモ=ハビリスには前から原人説があったのだが、今年版から原人と断定したため、原人の出現年代を一挙に繰り上げることになったのだ。  しかし、他の教科書、たとえば実教出版の『世界史B』では、2013年版でも「およそ180万前になると、原人(ホモ=エレクトゥス)があらわれた。」とされており、判断はむずかしいが、山川教科書の方が、新たな学会状況を取り入れれているようだ。
 猿人の出現時期もどんどんさかのぼっているが、原人も同様で、約100万年前から30万年前までを活動時期とする説もある。数年前までは原人の出現は50万年前とされていた。

原人の文化

 原人段階の人類は、脳容積が増大し、火の使用言語の獲得・石器製造技術の発達(ハンドアックスの出現など)など、飛躍的な「文化」を形成している。しかし、この原人と現代の人類(新人)の関係については、絶滅して現在につながっていないという説と、現在のアフリカ・ヨーロッパ・アフリカの各民族の祖先となったという説があるが、現在は前者が有力である。また、言語の使用に関しては、最近では疑問が提出されている。

Episode アフリカの原人、トゥルカナ=ボーイ

 1984年、ケニアのトゥルカナ湖畔でリーキー一家によってほぼ完全な原人化石が発掘された。約160万年前から蘇ったのは少年だったので、トゥルカナ=ボーイと名づけられた。身長はすでに160cm、大人になれば180cmに達したのではないかと言われている。脳は880cc、大人になれば900ccだろう。左の写真でも判るように現代人と代わらないスラリとした体型をしている。この大きな歩幅はハイエナと草原で競争しても負けなかっただろうし、彼らがアフリカ大陸から出て世界中に広がる原動力になったと考えられる。彼は猿人のルーシーと並んで化石人類のスターとなった。現在、上野の国立科学博物館にその骨格を見ることが出来る。<『人類進化の700万年』三井誠 講談社現代新書 2005 p.81 などによる>
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ノートの参照
序章1節 ア.人類の進化
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三井誠
『人類進化の700万年』
講談社現代新書 2005