印刷 | 通常画面に戻る |

シェイエス

三部会の第三身分代表として『第三身分とは何か』を発表しアンシャン=レジームを批判、フランス革命の口火を切った。

 アベ=シェイエスともいう。アベとは名前ではなく、僧侶の意味で、彼が聖職者出身であったのでそう呼ばれた。シーエスとも表記。聖職者の出身ではあったが、第三身分の代表として三部会に選出され、1789年1月に『第三身分とは何か』を発表してアンシャン=レジーム(旧制度)を批判し、フランス革命の口火を切った人物である。
 同年5月5日、三部会が招集されると、たちまちその決議方法をめぐって第一・第二身分と第三身分の意見が対立、暗礁に乗り上げた。そこで、シェイエスは、第三身分部会だけで会議を開き、国民の代表は我々であるとの自覚から、「国民議会」とすることを提唱した。国民議会が議場を使用することを拒否した国王に対し、憲法制定までは議会を解散しないことを誓う球戯場の誓いを行った。こうして国民議会は憲法制定議会としての役割を担うことになった。
 シェイエスは国民議会の中では、ミラボーラ=ファイエットらとともに穏健な立憲王政派という立場をとり、1791年憲法の制定などに尽力した。しかし革命が激化すると次第に保守的となり、表舞台からは消えた。
 ロベスピエール失脚後に復活して総裁政府の一員となり、ナポレオンと結んでブリュメール18日のクーデタを行い、統領政府では第一統領ナポレオンに次いで第二統領となった。ナポレオン没落に伴って亡命したが、七月革命で帰国、1836年に88歳で死んだ。フランス革命の指導者はほとんど若死にだったが、このシェイエスはタレーランと並ぶ長命な革命家だった。彼は「ミラボーとともに革命を生み、ナポレオンとともに革命を葬った」と言われている。

第三身分とはなにか

フランス革命の起こった1789年にシェイエスが出版し、第三身分の権利を主張したパンフレット。

 1789年1月、シェイエスの発行したパンフレット。正確には「第三身分とは何か。すべてである。今日まで何であったか。無である。何を要求するのか。それ相当のものに。」と題されており、発表と同時にそのアンシャン=レジーム(旧制度)を批判する内容が大きな反響を呼んだ。 シェイエスは聖職者であるので、僧侶を意味する「アベ」をつけて、アベ=シェイエスともいわれたが、早くから第一身分であることを否定し、自ら第三身分の代表として三部会に参加していた。

資料:『第三身分とは何か』

(引用)一つの国民が存続し、繁栄していくためには何が必要であろうか。私的労働と公的職務である。私的労働はすべて、四つの種類に概括できる。1.農耕‥‥2.製造業‥‥3.商業・卸売業‥‥4.学術・自由業から家事奉公まで‥‥。社会を支えているのは以上のような労働である。それらを担っているのは誰か。第三身分である。公的職務は、‥‥剣(軍事)、法服(法曹)、教会、行政(の四つに分類でき、)これらの職務のうちほとんど20分の19までを第三身分が占めており、‥‥したがって、第三身分とは何か。すべてである。ただし、足枷をはめられ、抑圧されたすべてである。特権身分がなくなれば、第三身分はどうなるであろうか。すべてである。ただし自由で活々としたすべてである。‥‥貴族身分は、その民事的、公的特権によって、われわれのなかの異邦人にほかならない。国民とは何か。共通の法の下に暮し、同一の立法府によって代表される協同体である。‥‥第三身分は国民に属するすべてのものを包含しており、第三身分でないものは国民とは見なされない。第三身分とは何か。すべてである。<シェイエス/大岩誠訳『第三階級とは何か』岩波文庫 >
印 刷
印刷画面へ
書籍案内

シェイエス/大岩誠訳
『第三身分とは何か』
1950 岩波文庫