ギリシア文化
西欧文明の起源の一つとされる、古代ギリシアの文化。前8~6世紀のアーカイック期を経て前5~4世紀の古典期に完成し、ヘレニズムに継承される。ローマ文化や遠くアジアにも影響を及ぼした。さらにその再発見を通じてルネサンスがもたらされた。
いわゆる暗黒時代を脱してポリス社会を成立させたギリシア人が、独自の神話や歴史を記述し、詩や演劇、神殿建築を中心とする美術などが生み出された。このギリシア文化は、およそ前8~6世紀のアーカイック期を経て、前5~4世紀の古典期に完成する。古典期のギリシア文化は、完成したポリス民主政のもとで、自由な市民が担い手となった文化であった。ということは、ペロポンネソス戦争による混乱、マケドニアの進出などをへてポリス社会が衰退すると、この文化の繁栄も終わりを告げることとなり、アレクサンドロス帝国の出現の段階でヘレニズムに変質する。 → ギリシア
ギリシア文化の継承
しかし、その根幹にある理念や技法は、ギリシア文化を継承するものであり、さらにローマ文化も、ローマは文化的にはギリシアに征服されたと言われるほど、その影響力は大きかった。結局地中海世界の古代文明は、ギリシア・ローマを一括して、「古典古代」と捉えられることになる。中世キリスト教文化の下では長くヨーロッパの人々から忘れ去られていたが、十字軍時代にギリシア文化とイスラーム文化が接触する中で、アラビア語文献からギリシア古典を学び、ギリシア文化の復活の素地ができる。そしてルネサンスはまさに、「古典古代」の復興をめざす文化運動として展開され、ギリシア文化はヨーロッパ(西洋)の文化・精神の一つの源流と意識されるようになった。ギリシアをヨーロッパ文明の故郷であるとする意識は、19世紀にギリシア愛護主義として強まり、オスマン帝国からのギリシア独立運動を生み出していく。