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論語

孔子の言行録を弟子たちがまとめたもの。儒学の最重要文献であるが、特に南宋の朱子が四書の一つとしてから重視されるようになり、朝鮮・日本などの儒教文化圏で広く読まれた。

 中国の古典の中でも最も広く読まれている書物であろう。いうまでもなく孔子とその弟子たちの言行録であり、四書の一つとして儒教・儒学の重要文献とされる。しかしこの書が重視されるようになったのは、南宋の朱子が四書に加えてからであり、漢代には、周代にさかのぼる原典ではないと言うことで五経には入れられなかった。いずれにせよ、儒教を一つの宗教体系・道徳論として作り上げた孔子の思想を、もっとも直接的に知ることのできる重要な書物であり、日本の思想や文化にも大きな影響を与えた。

「学習」・「温故知新」

  • 子曰く、学びて時に之を習う、亦たよろこばしからずや。朋あり遠方より来る。亦た楽しからずや。人、知らずして、うらまず、亦た君子ならざらんや。<『論語』学而>
    • 『論語』冒頭のことば。ここから「学習」という熟語が生まれた。ここでいう「学」とは読書の意味で、具体的には『詩経』『書経』などの儒教の経典を読むこと。そこから知識を得ること、暗記をすることである。覚えたことを忘れないために時折「習」う(復習する)ことが必要だ。このような繰り返しを通じて新たな知見が生まれるのであり、そこに充実した楽しさがあるのだ。
  • 子曰く、故きを温ねて新しきを知る。以て師と為るべし。<『論語』為政>
    • この有名な四字熟語「温故知新」の温は、通常は「たずねて」と訓読して「古い事柄も新しい物事もよく知っていて」、初めて人の師となるにふさわしい」<広辞苑>と解釈されている。しかし、どうして「温」を「たずねて」と訓めるのだろうか。それは中国の朱子学者の註を受け継いだ訓み方なのだが、江戸時代の漢学者の荻生徂徠はそれに異を唱え、「温」はそのまま「あたためて」と訓むべきだと主張している。現代の中国法制史家富谷至氏はそれに従い、「学んだことを復習せずに冷たくしてしまう、そうではなくて常に火を加えて肉を煮て熟成させるようにし、故事に習熟したうえに新しい知識を身につける」ことが大切だ、という学に対する態度、方法に関しての孔子の主張なのだ、と解釈している。<富谷至『四字熟語の中国史』2012 岩波新書 p.4-12>

 つまり、温故知新とは、「古いことを調べて新しい知見を得る」というよりは、「何度でも復習して新しい力にする」という学習法(平たく言えば勉強法)を説いている、と言えそうです。論語はそういう凡人の、わかりやすい生き方を説いている、と言っても良いでしょう。