トウモロコシ
アメリカ大陸原産の栽培植物。16世紀以降、世界各地に広がる。特に中国では清朝中期以降の人口急増期を支えた。
収穫前のトウモロコシ
いろいろなトウモロコシ
トウモロコシ栽培の広がり
大航海時代にヨーロッパにもたらされると、主として地中海岸で栽培されるようになり、さらに北米大陸にもたらされてグレートプレーンズの主要作物となった。さらにトウモロコシは、サツマイモなどと並んでヨーロッパ人によって中国にもたらされ、18世紀の清朝の時代に山地でも栽培可能な新作物として普及し、人口増加をもたらした。清朝中期の人口増加を支える
明後期の中国の人口は約1億であったが、明清交代期の混乱の過ぎた18世紀の清朝中期(乾隆帝の時代)には急激に人口が増加し、清朝末期には約3億に達した。清朝中期の人口増加の時代は、同時に移住と開墾の時代であり、四川盆地や長江流域の山地、東北地方や台湾などに人々が移住し、開墾していった。(引用)一般に、山地の開発を担ったのは、「棚民」といわれる移住者たちである。彼らは「棚」と呼ばれる簡単な小屋がけの住居に住み、森林を伐り倒して畑を作り、麻や藍などの商品作物を栽培した。彼らの食糧となったのは、痩せた産地でよくできるトウモロコシやサツマイモなど、16世紀に新大陸から導入された新作物であった。農業技術の面からいうと、明清時代にはあまり大きな技術革新はなかったにもかからず、急速な人口増加を支えることができたのは、この新作物の導入によるところが大きい。<岸本美緒他『明清と李朝の時代』世界の歴史12 1998 中央公論社 p.401>