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ディーネ=イラーヒー

ムガル帝国のアクバル帝が創出した、一神教的な新宗教。「神の宗教」の意味で、神聖宗教ともいわれる。

 ムガル帝国の第3代アクバル帝はイスラーム教スンナ派の立場にある統治者であったが、ヒンドゥー教の融和をその統治の柱としていた。さらにヒンドゥー教だけでなく、キリスト教についても学び、宮廷にいろいろな宗教家を招いて話を聞いた。その結果、彼はどの宗教も究極は一つである、という結論に達したようで、自ら「神の宗教」(ディーネ=イラーヒー)を説くようになった。どうやら単なる小手先でのヒンドゥー融和策ではなかったようだ。一種の総合的な新宗教の創造を考えたのかも知れないが、それは定着することなく終わった。彼はヒンドゥー教徒サティー(夫を亡くした妻が殉死する風習)や幼児婚を禁止しているが、それも無くならず、インド社会では最近まで続いていた。

Episode アクバル大帝の「火の審判」

 1580年、イエズス会の宣教師団がインドに到着した。「この年アクバルはゴアに人を遣ってキリスト教に関する情報を求めさせ、それに応えてルドルフォ=アクァヴィヴァ他二名のイエズス会士がファテプール=シクリ(ファテープル=シークリー)へ派遣された。アクバルは彼らを歓迎し、聡明な関心と共に彼らの説くところに耳を傾けた。しかしながら、相争う二つの宗教の真理を(回教徒はコーランを、キリスト教徒は聖書を捧げて共に火の中に歩み入るという)火による審判で試そうというアクバルの提案は、両者から慇懃に辞退されてしまった。」<ペンローズ『大航海時代』荒尾克己訳 筑摩書房 p.261>
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