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ニューイングランド

北米大陸の北東部一帯、イギリス人が入植した地域。ピューリタン系の移民が多く、マサチューセッツなどが13植民地の一部を構成し、アメリカ独立運動の中心となっていった。

 ニューイングランド地方とは、現在ではアメリカ北東部の諸州、マサチューセッツ、コネチカット、ロードアイランド、ニューハンプシャー、メーン、バーモントの6州を指す。アメリカ大陸で最も古くイギリスからの入植が進み、商工業が発達した地域である。はじめは、プリマス、ボストンなどの入植地(コロニー)に、ピューリタン系の人々が入植し、自治体(タウン)を作っていった。ピューリタン以外にも次第にクェーカー教徒やカトリック教徒なども増え始め、コロニー同士は必ずしも協調的ではなかったが、それぞれ自治の仕組みを整え、タウン制度を生み出した。特にニューイングランド地方は、早くから大学の設置や新聞の発行が行われ、ボストンに代表されるように、学術研究の中心としての伝統を形成させた。
 ニューイングランドのマサチューセッツ、コネチカット、ロードアイランド、ニューハンプシャーの4州は、アメリカ大陸東部に形成されたイギリスの13植民地の中核となり、アメリカ独立戦争を戦うこととなった。なお、奴隷制度の存続問題でアメリカの南北対立が激しくなると、1820年のミズーリ協定でミズーリ州を奴隷州とする代わりに、バランスをとってマサチューセッツ州の一部をさいて自由州のメイン州とした。 → アメリカの南北対立

ハートランドとしてのニューイングランド

 アメリカ史の黎明期には、ニューイングランドはアメリカ文化と伝統の象徴的な核、精神的「ハートランド」とみなされていた。現在、ハートランドと言われるのは、ニューイングランドだけではなく、シカゴ、クリーヴランド、デトロイトからネブラスカやカンザスの平原を含む広大な地域(もっともアメリカらしいとされる)を指しているが、アメリカ人の心の故郷とされるのはニューイングランドである。
(引用)ニューイングランドの殖民、旧移民たちは、メイフラワー号の乗船者達を始祖とする、いわゆるワスプ的特性を固持した。ニューイングランド地域以外の地域は南部、西部と呼ばれたが、ニューイングランドそのものが真のアメリカ国家を体現する地域と考えていた。そのことを後世に伝える役割を果たすのが印刷業や出版業界であり、それらはニューイングランドが中心であったために、アメリカの多くの地域でニューイングランド版アメリカ史が教科書となって次世代に伝えられていくことになった。そこには、他の地域の視点は十分に織り込まれていなかった。全米の学校で学ぶ子供たちが見たアメリカの過去はニューイングランドの「レンズ」を通して編集された歴史であった。<ジェームス・バーダマン/森本豊富訳『地図で読むアメリカ』2020 朝日新聞出版 p.48>