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アメリカ連邦議会

アメリカ合衆国憲法で定められた二院制からなる議会。合衆国の立法機関として、大統領の行政権、裁判所の司法権と三権分立の一角を担う。上院と下院は同等の権利を持つ。上院は各州2名の定員制、下院は人口比に応じた議席数が、いずれも選挙で選出される。

 アメリカ合衆国の連邦議会はアメリカ合衆国憲法の第1条に規定される、最も重要な国家機関で、三権分立立法権を有し、徴税や宣戦布告の権限など、大統領を上まわる権限を持っている。イギリスと同じく上院下院の二院制を採るが、立法に関しては両院は基本的に対等である。法律は両院のそれぞれ過半数の賛成で可決され、大統領が署名することで公布される。アメリカ大統領は法案への拒否権を持つが、それでも両院でそれぞれ3分の2以上の賛成があれば再可決される。憲法修正も連邦議会が発議権を持ち、両院それぞれで3分の2の賛成で発議し、4分の3の州が批准すれば修正が成立する。憲法修正には大統領の署名は必要ない。
上院 上院議員は任期6年で各州から(人口比例によらず)2名選出される。現在は50州なので全部で100議席しかない。2年ごとにその三分の一を改選する。同一州の2議席は別々な年に改選される。日本の二院制と違い、アメリカでは上院と下院がほぼ等しい権限を持つ。また上院議員は任期が長く、議席も少ないので、下院議員よりも権威が高いと受けとられており、歴代大統領も上院議員だったものが多い。日本の参議院とは異なっているので注意しよう。また大統領に対する弾劾裁判を行うのは上院である。
下院 下院議員は任期は二年で短い。現在は議席は435で、毎回そのすべてが改選される。選挙区は小選挙区で、10年ごとの国勢調査で複数の選挙区に分かれて(議席が一つだけの州もある)選挙が行われる。アメリカの下院は上院と並ぶ立法府として重要な国家機関であるが、イギリスや日本などの議院内閣制では下院議会から首相を選ぶが、大統領制では大統領は直接、国民から選出されるので、その点が大きく異なっている。また、議院内閣制の議会と異なって、アメリカの下院には解散はない。

資料 合衆国憲法の規定

 アメリカ合衆国憲法の議会に関する規定<第1条(連邦議会とその権限)>
第1節 この憲法によって与えられる一切の立法権は、合衆国連邦議会(Congress of the United States)に属し、連邦議会は上院(元老院 Senate)および下院(代議院 House of Representatives)で構成される。
第2節(下院の諸規定)
 ①選挙=各州人民が2年ごとに選出。選挙資格は各州の下院に准ず。
 ②被選挙資格=年齢25歳以上、7年以上アメリカ市民であること。
 ③議員数=各州の人口に比例。各州の人口とは、自由人の総数(年期服役者含む、納税の義務のないインディアンを除く)と黒人奴隷の5分の3を加えたもの。人口の算定は10年に1度の国勢調査による。
 ⑤議長(Speaker)=議員より選挙。
第3節(上院の諸規定)
 ①選挙=各州から2名ずつ選出。州議会が選出。任期は6年。
 ②改選=議員は2年ごとに3分の1ずつ改選。
 ③被選挙権=満30歳以上、9年以上アメリカ市民であること。
 ④議長(President)=副大統領がなる。  

憲法修正第17条

 連邦上院議員の選出は、①項にあるように、州議会が選出することになっていたが、19世紀末に民主主義強化を主張する革新主義の動きが強まり、有権者の直接選挙にすべきだという声が起こった。1907年にオレゴン州で初めて直接選挙が採用され、その後多数の州がこれに追随し、合衆国憲法の修正の要望が出されたため、1913年、合衆国憲法修正第17条が成立、全国で連邦上院議員は有権者の直接選挙で選ばれることとなった。<岡山裕『アメリカの政党政治』2020 中公新書 p.116>

連邦議会の特色

 アメリカ合衆国の連邦議会における議員の立法活動には、日本の議会とは異なる特徴が二点ある。
  1. どんな法案でも審議過程で徹底的に修正される。議員の立法に関わる度合いが強いので、院外の利益団体は法案の内容や修正、採否に対する働きかけ(ロビー活動)を積極的に行う。日本では役人が政府提出法案を作り、議会に提案されるが、約8割が実質的な修正を経ず成立している。
  2. 議員は所属政党の党議拘束を受けず、自律的に行動する。日本のような党議拘束で議員の投票行動を縛ることはほとんどない。最近は民主・共和両党の二極分化が著しいが、それでもある法案で賛成または反対が両党にまたがることが普通である。
<岡山裕『同上書』p.19>