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インド=ヨーロッパ語族

ユーラシアから西アジア、南アジアに広く分布する語族。印欧語族。現在の英語などをはじめとするヨーロッパに広がる言語と、インドのヒンディー語、イラン語などが同系統である。

 現在のヨーロッパで広く分布しているゲルマン語(英語、ドイツ語、オランダ語、デンマーク語、スウェーデン語など)、ロマンス語(ラテン語、フランス語、イタリア語、スペイン語など)、スラヴ語(ロシア語など)、ギリシア語などと、インドのサンスクリット語ヒンディー語、イランのペルシア語などは、起源が同じであり、インド=ヨーロッパ語族と言われている。インド=ヨーロッパ語族が世界でもっとも広範に分布している。
 世界史上、インド=ヨーロッパ語族が登場するのは、紀元前2000年から前1500年頃であり、遊牧生活をしていた彼らが一斉に移動を展開し、西アジアや東地中海、インドなどに入って新しい文明をもたらしたときである。その代表的な例が小アジアに建国したヒッタイトと、エーゲ海域に南下したギリシア人、インドに侵入したアーリヤ人である。ついでペルシア帝国を建設したイラン人、地中海世界を支配したローマ帝国のラテン人、アルプス以北でケルト人、4世紀に大移動を展開したゲルマン人スラヴ人などが登場する。かれらの源郷については不明な点も多いが、南ロシアの草原地帯(ステップ)説が有力である。
 最近の研究では、彼ら以前にアナトリアでは鉄器の使用が始まっていたが、ヒッタイトを始め、彼らは鉄器製造技術を早くから身につけ、先行する青銅器時代を終わらせ、前1500年頃に鉄器時代への移行を押し進めたということが出来る。

インド=ヨーロッパ語族の発見

 遠く離れたヨーロッパとインドの言語が同一の系統に属する言語であるという発見は、18世紀の末のイギリスのインド学者W.ジョーンズの提唱による。彼は非常に語学力に恵まれた人で、インドで学んだその地の古代語であるサンスクリット語と、ギリシア語・ラテン語との構造上の類似に着目し、さらにそれらがヨーロッパの諸言語にも認められることから、これらの言語はみな一つの源から分かれ出たものに違いないと考えた。これがきっかけとなって比較言語学が盛んになり、今日の言語学が勃興した。その後、語彙の比較や言語構造の分析が進み、その起源の地の探求が続いているが、スカンディナヴィア説、南ロシア説、カスピ海沿岸説などさまざまな説が出されている。<風間喜代三『印欧語の故郷を探る』岩波新書 1993 絶版>

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