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アリストファネス

古代ギリシアの喜劇作者。『女の平和』・『女の議会』などで時勢を批判した。

前5世紀の後半から前4世紀初めまでアテネで活躍した、ギリシア演劇の中の喜劇作者。その作品は市民たちの無節操や、デマゴーゴスたちの傲慢を笑い飛ばし、ペロポネソス戦争に国を導く為政者を厳しく批判した。『雲』ではソクラテスを主人公にしてソフィストたちの詭弁を皮肉った(ソクラテスも実際その劇を見に行ったという)。有名な『女の平和』では、ペロポネソス戦争にうつつを抜かす男どもに対し、性的ストライキで戦争をやめさせようとする話。『女の議会』は、当時参政権の無かった女性が、男装して議会を乗っ取るという話。いずれも喜劇の中にするどい現状批判をこめた作品であった。

女の平和

 古代ギリシアの喜劇作者アリストファネスの代表的な作品。この喜劇は前411年にアテネで初演された。うち続くペロポネソス戦争の中で、アテネ海軍のシチリア遠征が失敗し、全滅するという大敗北を喫してから2年目にあたっていたが、指導者はなおも戦争を継続しようとしていた。そのようなときに上演されたこの喜劇は、するどい反戦劇の意味を持っていた。舞台はアテネのアクロポリス。女主人公リューシストラレー(これが劇の原題。“戦争をつぶす女”の意味)が現れ、ギリシア各地から集まってきた女たちに性的ストライキを呼びかける。戦争にうつつを抜かす男どもに反省させるためだ。しぶる女もいたが、リューシストラテーの熱弁で彼女たちは一致団結する。そしてアテネとスパルタの代表が握手するという大団円を迎える。実際にはあり得ない話だが、この作品でアリストファネスが批判したのは、無謀な戦争にアテネを引っ張り込み、とくにシラクサ遠征を主張したアルキビアデスら主戦派の指導者たちと、その扇動に乗せられた市民に対してであった。
 戦争は男の仕事だ、女は戦争に何の関係もない。という役人に対して、リューシストラテーは言う。
(引用) リューシストラテー「どういたしまして、この不浄者め、あたしたちは戦争の二倍以上の被害者ですよ。第一に子供を生んで、これを兵士として戦争に送り出した。」
役人「過ぎたことをとやかく言うな。」
リューシストラテー「第二に歓喜にみちた青春を享楽すべきそのときに、軍旅のために空閨を守っています。ほら、あのことを気にもかけない、わたしどもは乙女らが閨(ねや)のなかで未婚のまま老いていくのがたまらない。」
<アリストパネース『女の平和』高津春繁訳 1951 岩波文庫 p.50>
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第1章2節 コ.ギリシアの生活と文化
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アリストパネース『女の平和』高津春繁訳 1951 岩波文庫