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権利の章典

1689年、イギリス名誉革命において制定された、王権の制限、議会の権限を定めた重要文書。マグナ=カルタなどと並んでイギリスの基本法典の一つとなる。

 Bill of Rights 1689年12月制定。正確には「臣民の権利及び自由を宣言し、王位継承を定める法律」。名誉革命でのジェームズ2世亡命後の善後策として国民協議会を召集、そこで権利の宣言が起草され、ウィリアム3世メアリ2世がそれを承認することを条件に共同統治として即位を認めた。さらにそれに法的効力を与えるため、「権利の章典」として改めて成文化し、制定・公布したした。
 立法権・徴税権・軍事権の議会にあることを保障、かつ王を任免する権利も議会にあることを明らかにし、立憲君主制の基礎を据えた。国王は政府の執行権・大臣の任免権を保持した。この法律は、マグナ=カルタ(1215年)と権利の請願(1628年)などと並び、イギリス憲法を構成している。 → イギリス議会制度  立憲君主政

「権利の章典」(Bill of Rights)の主な規定

 『権利の章典』は、三つの部分に分かれており、第一部は、前国王ジェームズ2世の悪政を12項目に亘って列挙し、ウィリアムとメアリが新国王となったことの正当性を詳しく述べている。第二部が私たちが史料集などで権利の章典として見る部分であり、議会で議決され、両国王が承認した、13項目にわたる国民について述べている。第三部は「王位継承を定める法律」の部分で、継承権第一位がメアリ女王の子孫、第二位をメアリの妹アン(デンマーク女公)とその子孫、第三位をウィリアム3世の子孫と定めている。
 ここでは大切な国民の権利として認められた13項目を挙げておこう。
  • 1.国王の権限により、国会の承認なしに法律を停止、または法律の執行を停止しうるとする主張は、違法である。
  • 2.国王が法律を無視したり、執行しなかったりすることは、違法である。
  • 3.教会関係の事件を処理するための宗務裁判所は、すべて違法であり、有害である。
  • 4.国王大権と称して、議会の同意なくして、王の使用のために税金を課すことは違法である。
  • 5.国王に請願することは国民の権利であり、このような請願をしたことを理由とする収監または訴追は、違法である
  • 6.議会の同意なしに、平時に常備軍を徴募し、維持することは法に反する。
  • 7.新教徒である臣民は、法の許範囲内で自衛のため武器を持つことができる。
  • 8.議員の選挙は自由でなければならない。
  • 9.議会での言論の自由および討論・議事手続きについて、議会外で弾劾されてはいけない。
  • 10.過大な保釈金、過大な罰金、残虐で異常な刑罰を科してはならない。
  • 11.陪審員は正当な方法で選ばれねばならない。
  • 12.有罪の判決の前に、罰金、没収に関して権利を付与および約束はすべて違法であり、無効である。
  • 13.いっさいの不平を救済するため、また法律を修正・強化・保持するために、議会はしばしば開かなければならない。
 以上は適当に要点をまとめた文なので、厳密な訳文は<高木八束・末延三次・宮沢俊義編『人権宣言集』岩波文庫 p.82>などにあたって下さい。

参考 Petition of Right と Bill of Rights 

 先日、一読者の方から、質問が寄せられました。「権利の請願」は Petition of Right 「権利の章典」は Bill of Rights となっているが、なぜ前者が単数形で、後者が複数形なのか、ということでした。
 そこで、いくつか文献に当たりましたが、直接このことに言及しているものはありませんでした。サイト世話人も専門ではないので、答えにはならないのですが、以下のように返事をいたしまた。
 ネットで英文の本文にあたり、right と rights がそれぞれどのように使われいるか、あたってみました。そのれによると、まず right という単数形は意外にも『権利の請願』の本文には見られませんでした。『権利の章典』にはその第五項に次の文が見られます。
That it is the right of the subjects to petition the king, and all commitments and prosecutions for such petitioning are illegal;
『人権宣言集』(岩波文庫)では「国王に請願することは国民の権利であり、このような請願をしたことを理由とする収監または訴追は、違法である」となっています。
 つまり、the right of the subjects ですから「諸国民のもっている権利一般」のことでしょう。  一方、複数形の rights が使われているには、『権利の請願』では一ヶ所だけで、それは請願の最後の項目にある次の文です。
 as their rights and liberties, according to the laws and statutes of this realm
『人権宣言集』(岩波文庫)では「わが国の法律によるかれらの権利および自由として」となっています。
 つまり、「法律に定められた権利」として使われています。そして、『権利の章典』の方では rights という複数形は、何カ所かでてきます。
 ということから言えることは、right は「国民の権利」といった一般的な意味で、国王に対して包括的に「請願」する場合に使い、rights は文字通りいくつもの「諸権利」を、各項目ずつ法律の条文として示すときに使う、ということではないでしょうか。
つまり、petition of right は、単なる「請願」にとどまっており、bill of rights は個々の「権利条項」として法律化されている、という違いと思われます。
 質問を寄せられた京都の森澤さん、ありがとうございました。また、どなたか、正確な回答をお持ちの方がおられましたら、ぜひお教え下さい。
 なお、参考にした英文サイトは、それぞれこちらです。『権利の請願』『権利の章典』 <以上 『世界史の窓』世話人>
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ノートの参照
9章1節 ウ.イギリス議会政治の確立
書籍案内

高木八束・末延三次・宮沢俊義編『人権宣言集』
1957 岩波文庫