インカ文明
15世紀に、アンデス文明の中で最も繁栄したインカ帝国における文明。独自の石造建築技術など高度な文明を発達させたが、1533年、スペイン人征服者によって破壊された。
15世紀後半までにアンデス高地の現在のエクアドルからペルー、チリにおよぶ広い範囲を支配したインカ帝国の文明。その特徴はいずれもアンデス文明の伝統を受け継いでおり、次のような事柄である。
インカの飛脚、チャスキ
インカ帝国では広大な帝国を支配するため、全土に道路網を建設し、チャスキといわれる伝令、つまり飛脚をおいていた。帝国を維持するには効率的な情報伝達が重要であるが、それを可能にしたのがチャスキだった。
そのチャスキが海抜3600メートルの都市クスコを中心とした山岳道路を駆け回るのに必要な薬草がコカだった。チャスキはいつもピクーナ(アンデスに生息するラクダの仲間の毛織物)で作ったチュルパという袋にコカの葉を入れて大切に身につけていた。コカの葉を噛むことで呼吸を整え、酸素補給と同じ効果を得ていたのだ。
右の図がチャスキで、キピという届け物を入れる袋を背負い、右手でチャスキの到着を知らせるトランペットのようなものを吹き鳴らしている。左手にさげているのが、伝言内容を結び目で記録したキープである。<説明はビル・ローズ/柴田譲治訳『図説世界史を変えた50の植物』2012 原書房 p.72-「コカノキ」より。図は、『ラテンアメリカを知る事典』平凡社 p.66>
- 太陽信仰を中心とした、アニミズム的な宗教による国家統制。首都クスコには太陽の神殿が建設された。
- トウモロコシ、ジャガイモを中心とする高度な潅漑農業が行われていた。リャマ、アルパカなどの牧畜も行われていた。
- 高度な石造建築技術。太陽の神殿や灌漑施設、道路、公共浴場など、大規模かつ精巧な石造建築が発達した。
- 石造建築技術を駆使した大都市がアンデス山中に建造された。首都のクスコや世界遺産マチュピチュがその例。
- 独特の意匠を持つ土器類がつくられ、綿織物、毛織物の技術とともに金銀、銅、青銅の金属加工技術が高度に発達した。
- 独自のキープ(結縄)による記録方法を持っていたが、文字は用いられなかった。
- アンデス文明の伝統を継承して、コカ、タバコなどの薬草の利用や脳外科手術など独自の医療技術が存在した。
- 旧大陸との関係が無かったため、独自の文化を発展させたが、鉄器、車の利用など欠けるものもあった。
インカの飛脚チャスキ
インカの飛脚、チャスキ
そのチャスキが海抜3600メートルの都市クスコを中心とした山岳道路を駆け回るのに必要な薬草がコカだった。チャスキはいつもピクーナ(アンデスに生息するラクダの仲間の毛織物)で作ったチュルパという袋にコカの葉を入れて大切に身につけていた。コカの葉を噛むことで呼吸を整え、酸素補給と同じ効果を得ていたのだ。
右の図がチャスキで、キピという届け物を入れる袋を背負い、右手でチャスキの到着を知らせるトランペットのようなものを吹き鳴らしている。左手にさげているのが、伝言内容を結び目で記録したキープである。<説明はビル・ローズ/柴田譲治訳『図説世界史を変えた50の植物』2012 原書房 p.72-「コカノキ」より。図は、『ラテンアメリカを知る事典』平凡社 p.66>