ゴシック様式
13~14世紀のヨーロッパの建築、美術の様式。ロマネスク様式に次ぎ、ルネサンス様式の前に当たる。
西洋美術史において、ロマネスク様式に次いで、12世紀に始まり、13~14世紀に西ヨーロッパに広がったキリスト教聖堂建築様式と、それに伴う絵画、彫刻などの美術様式。15世紀からはイタリアを中心にルネサンス様式に移行していく。
ゴシック様式の特色
要点は尖頭アーチと薄い壁、広い窓。窓にはステンドグラス。外壁や柱の豊富な彫刻。都市の勃興を背景として、都市民の経済力による大規模な教会堂の建築が始まり、高い尖頭アーチとそれを支える肋骨(リブ)が特徴。天井が高くなったために、窓を広く取ることが出来るようになり、ステンドグラスで装飾されるようになった。「ゴシック」の意味
ゴシック gothic とは「ゴート人風の」(つまりゲルマン人的、ドイツ的ともとれる)という意味で、16世紀のイタリアにおいて、「ゴート人風の粗野な建築」という軽蔑的な意味をこめて使われた。ルネサンス以降のイタリア人の人間主義、合理主義からみれば、天をつくようなゴシック聖堂は非合理的な、粗野なものと写ったのである。アルファベットの書体の一つ「ゴシック」ゲルマン人の用いていた書体を、典雅なローマン書体に対して無骨な太字であるところから名付けられたものである。 → 東ゴート人ゴシック様式建築の具体例
最も古いゴシック様式建築はパリのサン=ドニ修道院に見られ、その他、フランスではアミアン、ランス、シャルトル、パリのノートルダム、イタリアではシエナ、アッシジ、ミラノ、イギリスではカンタベリー、ウェストミンスター、ドイツではケルン、シュトラスブルク、フライブルクなどの大聖堂が有名。参考 ケン=フォレットの歴史小説『大聖堂』
イギリスのスパイ小説作家、ケン=フォレットが1989年に発表した『大聖堂』(The Pillars of the Earth )はめずらしい中世イギリスを舞台にした歴史小説。12世紀イギリスのノルマン朝のマチルダとスティーヴン王の王位継承の争いという史実を背景に、大聖堂の建築に命をかける親子二代にわたる物語である。ヨーロッパを放浪して、特にパリのサン=ドニ修道院の大聖堂(最初のゴシック建築とされる)に感嘆し、その新しい建築技術である尖頭アーチの技法をイギリスに持ち帰る。作中にくわしくゴシック建築の技法について言及があるので、(やや長いが)一読をおすすめする。<ケン=フォレット/矢野浩三郎訳『大聖堂』 上・中・下 新潮文庫>