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スタール

フランス革命期に活躍した女流作家。ネッケルの娘。亡命したドイツでロマン主義に接し、ナポレオン退位後に戻りフランスのロマン主義文学の先駆者となった。

 フランスの閨秀作家として著名なスタール 1766-1817(フランスで Madame Staël といわれていたので、日本でもかつては「スタール夫人」と言われていたが、現在では女性にだけ夫人を付けて呼ぶのは、女性差別にあたるという指摘があるので、あえて夫人をはずしている)は、ルイ16世のもとで財政改革にあたったスイス人銀行家ネッケルの娘である。1766年にパリで生まれ、幼少の頃から母のサロンでディドロダランベールらと接し、影響を受けて育った。駐仏スウェーデン大使のスタール=ホルシュタイン男爵と結婚して「スタール夫人」と呼ばれるようになったが、まもなく別居し、文筆活動を始めた。1789年7月、23歳の時、父が財務長官の地位を罷免されたのがきっかけとなってフランス革命が勃発するという激動に遭遇した。

ドイツ=ロマン主義をフランスに紹介

 父とともにスイスのジュネーヴに逃れたが、間もなくフランスに戻り、革命の中で自由主義者として成長し、ナポレオンが権力を握ると盛んに批判の論陣を張ったので迫害され、ドイツに亡命した。ドイツでロマン主義の文学を知り、ナポレオン退位後の1815年に帰国後すると、フランスにロマン主義を紹介し、フランス=ロマン主義文学の先駆者となった。『文学論』、『ドイツ論』などの評論のほか、自ら小説『デルフィーヌ』などを発表した。1817年に没した。
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書籍案内

佐藤夏生
『スタール夫人』
Century Books―人と思想
2005 清水書院