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王政(ローマ)

古代の都市国家ローマにおける最初の政治形態。前509年、王は追放され貴族共和政に移行した。

 伝説では前753年にローマを建国したというロムルスから、全部で7代の王政が続いた。ロムルス王はおそらく神話上の人物であるが、次の6代の王は実在の人物の事跡を反映していると考えられている。これらの王は世襲ではなく、都市への集住を主導した有力者たち(ローマではパドレスといわれた)の中から選ばれたのであり、オリエントの王のような祭政一致的な絶対権力を持っていたのではなかった。

リヴィウスが伝えるローマ王

 前1世紀の歴史家リウィウスの『ローマ建国史』の伝えるところによると、第2代のヌマ王(在位715~前673年)は「力と武器によって建設された新生の市を人の法、すなわち法と同義を以て建設し直すこと」に取りかかり、何はさておき一年を月の運行に合わせて12ヶ月に分け、各月30日ずつとし、太陽の一巡で完結する一年に11日足りないので閏月を挿入するなど暦を改訂した。祭司職を創設して神々への敬虔の念を大事にすることを教えた。「そして、ローマ人が唯一の範例のごとく王の流儀に倣い、自ら進んで身を正し」、そのためローマの周辺都市への畏敬の念も現れて、戦争に寄らず平和の力によって43年間統治したという。<リヴィウス/鈴木一州訳『ローマ建国史』上 2007 岩波文庫 p.54,58>
 前616年にはティベル川北方のエトルリア人のタルクィニウスがローマにはいり、はじめてエトルリア人の王(第5代)となった。
 第6代のセルウィウス=トゥルリウス王はローマ人で、後の共和政に繋がる重要な改革を行ったと伝えられている。「ちょうどヌマが神の法を制定したように、セルィウスは市民団におけるそれぞれの区分、すなわち、地位と財産による秩序を明白に区別すべき諸制度を創設した」<リヴィウス『同上書』p.105>とされ、それが民会の一つ兵員会の創設であるとされている。
 第7代の王には、エトルリア人のタルクィヌス家の王がふたたび選ばれている。リビウスはこの二人のタルクィヌス家の王の時代は戦争がたびたび起こり、不道徳な事件が続いたことを詳しく述べた末に、前509年にローマ市民団が国王を追放し、共和政を樹立した顛末を伝えている。この第7代ルーキウス=タルクィニウス王は「傲慢(スペルブス)」という添え名が付けられた。、
(引用)まこと、この王は、何ごとも元老院に諮問するという先行諸王が受け継いできた慣行を初めて破り、一族郎党に諮って共同体の公務を切り回した。戦、平和、盟約、同盟を、人民の決議なく、元老院に諮らず、自分の一存で、望む相手と取り結び、あるいは、破棄した。<リヴィウス『同上書』p.124>
 この最後の追放された王の諸行を見れば、ローマの市民共同体がどのような統治を望んだかがあきらかであろう。

王政から貴族共和政へ

 権力をにぎった市民の中の上層部は貴族(パトリキ)といわれ、民会(市民が直接参加する最高決議機関)と元老院(有力貴族の終身議員からなる諮問機関)を国家機関とし、民会で選出されるコンスル(定員二名)が指導する貴族共和政を樹立した。貴族身分でない市民は平民(プレブス)といわれた。

ローマ王政の特色

(引用)ローマが王を追放して貴族を中心にした共和政を樹立したのは、紀元前6世紀末であったが、この時にはじめて……貴族政ポリスになったと考えるべきではない。ローマは建国以来七人の王をいただいたと伝えられるが、この王政時代を通じて王権はオリエントのように強大になったことはなかった。このことは、元老院や民会が王権を制約するものとしてすでに存在していたことから察せられるが、なによりも、貴族によって王が追放され、しかもさしたる国制上の変更なしに(わずかに王の代わりに任期一年定員二名のコンスルと祭事王がおかれたのみ)共同体国家の運営がおこなわれたことからあきらかであろう。<弓削達『ローマ帝国論』初刊1966 再刊2010 吉川弘文館 p.46>

Episode ロムルスとサビニ人の女たち

 伝説では、前753年にローマを建国したロムルスは、ローマに女性が少なかったので、近隣のサビニ人の女性を奪ってきた。そのためため両者は戦いとなったが、略奪された女たちが「どちらが勝っても私たちは不幸になる、サビニ人が勝てば夫を失い、ローマ人が勝てば兄弟を亡くすことになる」、と訴えたので戦いはやみ、その時の約束でローマ人とサビニ人が交互に王位に就くこととなったという。そこでロムルスの死後の2代目の王はサビニ人のヌマが選ばれたという。ナポレオン時代の画家ダヴィドの『サビニの女たち』はこの伝説を題材としている。 → ローマの建国神話
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ノートの参照
1章3節 ア.ローマ共和政
書籍案内

リヴィウス/鈴木一州
『ローマ建国し』上
2007 岩波文庫

弓削達
『ローマ帝国論』
初刊1966 再刊2010
吉川弘文館