イスラーム帝国
イスラーム国家が、アラブ人主体の国家から、非アラブのムスリムを平等に扱う段階になった8世紀後半のアッバース朝以降を特にイスラーム帝国という。
ムハンマドが622年にメディナで組織したイスラーム教徒の共同体であるウンマは、国家の形態をすでに持っており、広い意味では「イスラーム帝国」という場合もあるが、このイスラーム国家は、7世紀の正統カリフ時代と8世紀前半までのウマイヤ朝時代までは、あくまで征服者であるアラブ人主体の国家であったので、「アラブ帝国」と言う。
ムハンマド時代→正統カリフ時代→ムアイア朝時代→アッバース朝時代と広がっていったイスラーム帝国の領土を示すと次のようになる。
イスラーム帝国の拡張
a ムハンマド時代 b 正統カリフ時代 c ウマイヤ朝~アッバース朝 d ビザンツ帝国
1.メッカ 2.メディナ 3.ダマスクス 4.イェルサレム 5.バグダード 6.アレクサンドリア 7.コルドバ 8.グラナダ 9.トゥール 10.ポワティエ 11.ローマ 12.コンスタンティノープル 13.ニハーヴァンドの戦い 14.トゥール=ポワティエの戦い 15.タラス河畔の戦い
なお、イスラーム帝国という言い方のほかに、古くは日本では「サラセン帝国」とも言われていたが、これには野蛮な国という蔑視が入っているので、現在では使用されない。 → イスラーム帝国の分裂
アラブ帝国からイスラーム帝国へ
それに対して、750年に成立したアッバース朝から、イスラーム国家は、アラブ人以外のイスラーム化したイラン人やトルコ人などの西アジアの広範な民族が加わり、イスラーム教の信仰によって結びついて平等な構成員となっていった。アッバース朝では税制改革などによってイスラーム教徒(つまりムスリム)としての平等化がはかられたので、厳密な意味で「イスラーム帝国」といえるようになった。ムハンマド時代→正統カリフ時代→ムアイア朝時代→アッバース朝時代と広がっていったイスラーム帝国の領土を示すと次のようになる。
イスラーム帝国の拡張
1.メッカ 2.メディナ 3.ダマスクス 4.イェルサレム 5.バグダード 6.アレクサンドリア 7.コルドバ 8.グラナダ 9.トゥール 10.ポワティエ 11.ローマ 12.コンスタンティノープル 13.ニハーヴァンドの戦い 14.トゥール=ポワティエの戦い 15.タラス河畔の戦い
イスラーム世界の分裂
しかし、これに際してウマイヤ朝の残存勢力が遠く西方のイベリア半島に自立し、756年に後ウマイヤ朝を建国したので、アッバース朝の成立はイスラーム世界の分裂の始まりとなり、アッバース朝もハールーン=アッラシードの時に全盛期を迎えたが、9世紀初頭のその死後に急速にイスラーム帝国の分裂が進み、三人のカリフが併存する3カリフ時代という分裂期に入るむこととなる。なお、イスラーム帝国という言い方のほかに、古くは日本では「サラセン帝国」とも言われていたが、これには野蛮な国という蔑視が入っているので、現在では使用されない。 → イスラーム帝国の分裂