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ウラマー

イスラーム教でイスラーム法を学んだ神学・法学者。ひろく知識人をも意味し、モスクやマドラサで信徒の宗教指導にもあたった。イスラーム国家では政治的にも重要な役割を果たしたが、近代以降の世俗的国家ではその意義は低下した。

 イスラーム教コーラン(クルアーン。ムハンマドの言行録)とハディース(ムハンマドの伝承を収集した書)を解釈し、イスラーム法(シャリーア)の維持にあたる神学・法学者。またひろくイスラーム法学を修めた知識人を言う。ウラマーの中でイスラーム法による裁判を行う裁判官の役目を果たす人々は特にカーディと言われる。ウラマーは、一般信徒の礼拝の指導者ともなり、説教者、礼拝の導師、コーランの読誦者、モスクの管理者、マドラサでの教師、などの面もあったった。
注意 ウラマーは「聖職者」ではない。イスラーム教では聖職者の存在は否定されている。聖職者とはキリスト教における古代の教父やカトリック教会の教皇以下、祭司に至るまでのヒエラルキア、新教での牧師などにあたる特定の「神の代弁者」としての職掌をいう。イスラーム教では厳格な一神教原理を守っているので、神と人間の間に特定の職掌を持つ人々を聖職者とすることを否定している。古代的多神教での神官や、仏教での僧侶にあたる存在もイスラーム教では置かれない。
スーフィーとの違い 彼らはシャリーアを厳密に解釈しようとするあまり、次第に形式的、律法主義的になっていっていき、それに飽き足りず、神との感覚的な一体化を目指す運動として起こったのが神秘主義運動である。神秘主義の担い手がスーフィーであるが、かれらはもともと修行者であって、ウラマーのような権威を否定した人々であった。

シーア派国家でのウラマー

 イスラーム多数派のスンナ派にたいして少数派のシーア派の中の、特に、イランの国教とされた十二イマーム派では、「隠れイマーム」となった第12代のイマーム(アリーの血統を継ぐ最高の権威を持つ宗教指導者)が再臨するまでの、イスラーム法の解釈権を代行する権利を持つのがウラマーであるとされ、重要な役割を担うこととなった。現代におけるシーア派イスラーム国家であるイランにおけるイラン=イスラーム革命を指導したホメイニもそのようなウラマーである。

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