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固有の学問(イスラームの学問)

イスラーム世界の学問で、コーランなどを根拠とする学問。

 『コーラン』と『ハディース』(ムハンマドの言行録)を根拠とするアラブ人の伝統的学問。アラビア語の言語学とコーランの解釈から発達した神学法学がおこる。ついでムハンマドの伝承研究から歴史学が発達した。これらのイスラーム教の信仰に内在する学問を「固有の学問」というのに対して、ギリシアやインドなどの非アラブ地域からもたらされた学問を「外来の学問」と言っている。

イスラームの言語学

 『コーラン』の言葉であるアラビア語を研究する学問。イスラーム固有の学問の言語学とは、主としてアラブ人以外の人々がコーランを理解するために必要であり、また彼らが役人になるためにはアラビア語の理解が必須だったので、その文法書などが多数作られた。特に、アラブ人がミスル(軍営都市)として築いたバスラとクーファ(いずれも現在のイラク)で、イラン系の人々の中でアラビア言語学の研究が盛んになった。

イスラーム神学

 イスラーム教の教理を研究する学問。代表的な神学者には、11世紀末セルジューク朝のバグダードのニザーミーヤ学院の教授ガザーリーなどがいる。外来の学問であるギリシア哲学と結びついて、イスラーム哲学を発展させたイブン=ルシュドなどもヨーロッパ中世のスコラ哲学に大きな影響を与えた。

イスラーム法学

 コーランハディース(ムハンマドの言行録、伝承)を根拠とするイスラーム法のことをシャリーアという。シャリーアを学び、解釈する法学は、神学と並んで固有の学問の中心となるものであった。その研究に従事し、新たな判断を加えるために専門の学者、知識人がウラマーとして大きな権威を持っていた。しかし、シャリーアの解釈のあり方をめぐって、いくつかの学派に別れ、スンナ派にはハナフィー派、シャーフィイー派、マーリキー派、ハンバリー派の4つの学派が形成された。

イスラームの歴史学

 イスラームの歴史学は、ムハンマドの伝承を記録する伝承学から発達した「固有の学問」である。イスラームの征服地が広がり、アラブ帝国からイスラーム帝国に進展するに従い、複雑な歴史的事象に筋道をつけて叙述する必要が出てきた。歴史学でも多くの業績を上げたのはイラン系の人々が多く、『預言者と諸王の歴史』をまとめたタバリーなどがそうである。14世に西方イスラーム世界の北アフリカにイブン=ハルドゥーンが現れ、イスラーム歴史哲学の最大の著作『世界史序説』を著した。

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