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包括的核実験禁止条約/CTBT

1996年、国連総会で採択された全面的核実験禁止を定めた国際法。アメリカなどの批准がすすまずまだ発効していない。

 1996年9月10日、国連総会で採決された条約国際法。全面的な核実験の禁止を定めているが、アメリカなどが批准していないため、発効していない。=CTBT(Comprehensive Nuclear Test Ban Treaty)
 第1条で「締約国は・・・自国の管轄又は管理下にあるいかなる場所においても核兵器の実験的爆発又は他の核爆発を禁止し防止することを約束する」とある。1968年の部分的核実験停止条約(PTBT)は地下核実験を禁止していなかったので、70~80年代には核保有国による地下実験が多数行われた。また70年代の緊張緩和(デタント)の時期に始まる核兵器の制限および削減は進んだが、それは米ソが直接交渉する形で進められ、国際世論とはずれがあった。国連の場では核の独占体制とそれに反発して核が拡散するという矛盾を無くし、核軍縮を有効なものとする方策が探られ始めた。

国連総会で採択

 1993年からジュネーヴ軍縮会議(CD)の場で、CTBT締結に向けての交渉が始まったが、平和目的の実験を容認すべきであると主張する中国、安全性の確認のための実験は容認すべきだとするフランス・イギリス、「爆発を伴わない実験」を認めよというアメリカなどの意見が対立し、暗礁に乗り上げた。しかし、包括的な核実験を禁止せよと言う国際世論の高まりは無視することができず、国際司法裁判所も核兵器を国際法、人道法に反すると判断するなどの気運が高まり、1996年9月の国連総会で賛成158、反対3、棄権5で同条約が採決された。
条約発効の条件である各国の批准のめどが立っていない。 インド核拡散防止条約(NPT)にたいしても反対を表明し、核の平和利用のためと称して1974年に核実験を行っていたが、このCTBTに対しても、非保有国の核資源開発が否定されていること、核兵器の廃絶に明確な期限が定められていない事などをあげて、反対した。そして、98年5月に軍事目的の核実験を強行した。同様に核保有をすでにしているパキスタン、進めていると言われているイスラエルもCTBTへの署名に応じていない。また、アメリカは条約成立後も「爆発を伴わない実験」(未臨界実験)を続け、ブッシュ政権下の議会が批准を否決した。そのため条約の死文化のおそれが出ている。<岩波小辞典『現代の戦争』2002 岩波書店 p.245 などによる>

NewS ロシアが批准撤回 2023/11/2

 ロシアのプーチン大統領は、2023年11月2日、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を撤回する法案に署名し、同法は成立した。ロシアは2000年にCTBTを批准したが、プーチン大統領は10月5日にこれを取り下げる方針を表明していた。ロシア議会上院が25日に承認しており、大統領の署名で一連の手続きが終了した。批准を撤回した理由として、アメリカが署名国でありながら批准していないことをあげ、ロシアの立場を対等にするためである、と説明している。一方で、条約を離脱するわけではない、核実験のモラトリアム(一時停止)は継続すると表明している。
 プーチン政権は同年2月、アメリカとロシアの間の核軍縮の唯一の枠組みである新戦略兵器削減条約(新START)の履行を停止すると発表、10月25日にはロシア軍の戦略核戦力部隊の演習を2年連続で実施するなど、ウクライナ戦争を継続する中で、北大西洋条約機構(NATO)に対する威嚇を続けている。
 ロシアのCTBT批准撤回を受け、アメリカのブリンケン国務長官は声明を出し、深刻な懸念を表明した。またアメリカ議会で上院出席議員の3分の2以上の賛成を得られず、未批准の状態にあることに対し、ブリンケン国務長官は条約発効に向けて取り組んでいくと強調した。<ロイター、時事などによる新聞各社の記事を総合> → ロイターニュース 2023/11/3
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前田哲男編
『現代の戦争』
2002 岩波小辞典