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タレース

古典期ギリシアの自然哲学者。万物の根源は水である、と考えた。

紀元前6世紀の小アジアのギリシア人植民都市ミレトスの人で、イオニア自然哲学の祖とされる。彼は万物の根源(アルケー)は水であるとした。また前585年5月28日に小アジアで起こった日食を予言したとして、賢人と言われた。
 タレースの著作は一切伝わっていないが、ヘロドトスやアリストテレスなどの著述の中に引用されている。上記の日食の予言以外にも逸話の多い人で、ピラミッドの高さを測ったとか、こぐま座を基準とする航海術に改善したなどとも言われている。彼は貧しかったので、哲学など何の役にも立たないと非難されたとき、天文気象の研究からオリーヴの豊作を見越し、油をしぼる工場を借り切り、やがて彼の見通しが当たって、工場の借り手が殺到し、しこたま利益をあげたという話や、彼が星をながめていて穴に落ちた話などが伝えられている。<高野義郎『古代ギリシアの旅』-創造の源を訪ねて- 岩波新書 2002 p.13>
 「ギリシアの七賢人のひとりタレスは、何が一番難しいかと問われて「自分を知ること」と言ったそうだ。では容易なことは?と聞かれ、「他人に忠告すること」と答えたという。・・・」<朝日新聞 2009.12.1 天声人語>

Episode タレスの予告した日食

 ヘロドトスの『歴史』に次のような一節がある。「・・・リュディアとメディアの間に戦争が起こり五年に及んだが、この間勝敗はしばしば処をかえた。ある時などは一種の夜戦を戦ったことがあった。戦争は互角に進んで六年目に入ったときのことである。ある合戦の折、戦いさなかに突然真昼から夜になってしまった。この時の日の転換は、ミレトスのタレスが、現にその転換の起った年まで正確に挙げてイオニアの人々に預言していたことであった。リュディア、メディア両軍とも、昼が夜に変わったのを見ると戦いをやめ、双方ともいやが上に和平を急ぐ気持ちになった。」<ヘロドトス『歴史』巻一 74節 松平千秋訳 岩波文庫(上)p.61>

Episode 独身主義者タレス、ソロンをからかう

 プルタルコスの『英雄伝』のソロン伝にはアテネのソロンがタレスを訪ねたときの面白い話が載せられている。「タレスを訪ねてミレトスに赴いたソロンは、彼が結婚とか子供を作ることを全く考えていないのに驚いた。タレスはその場では沈黙していたが、いく日かおいて一人の外国人を使って、十日前にアテナイを立っていま着いたばかりだと言わせた。」ソロンがアテナイに何か新しいことがあったかと訊ねたところ、「実は一人の若者の弔いがありまして市民たちみんなが葬列に加わりました。噂では名声の高い、市民の中で徳に最も優れた方のご子息だそうです。そのお方がお見えにならなかったのは、大分前から外国を旅しておられるためだそうです」と言った。恐怖に駆られたソロンが、その人の名は?と訊ねると、たしかソロンという名前でしたという答えが返ってきた。ソロンが自分の頭を打ち、悲嘆にくれているとタレスは彼をなだめて笑いながら「これだからわたしは結婚や子供をもつことをしないのです。あなたほどしっかりした人でも打ちのめすのだから。しかし今の話についてはご安心下さい。事実ではないのですから」と言った。アテナイから来た人の話は、タレスがしくんだ芝居だったのだ。独身主義のタレスがソロンをからかったわけである。もっともプルタルコスは「貧乏をもって財の喪失に対し、友を作らぬことをもって友をうしなうことに対し、子供をもたぬことで子供の死に対する予防策とするよりも、理性をもってあらゆる不幸に備えるべきである」と論評している。<プルタルコス『英雄伝』上 村川堅太郎訳 ちくま学芸文庫 p.109-110>
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第1章2節 コ.ギリシアの生活と文化