印刷 | 通常画面に戻る |

臨安/杭州/キンサイ

南宋が1138年に置いた都。元代から杭州といわれ貿易港として繁栄。マルコ=ポーロは「キンサイ」と呼んでその繁栄を伝えた。

隋の大運河の終点として発達

 杭州は、杭州湾にそそぐ銭塘江(せんとうこう)河口の北岸にあり、秦漢時代から江南地方の物資の集積地として栄えていた。南北朝時代の南朝諸王朝による江南の開発が進み、この地は氏の中心となっていった。隋の煬帝はこの地から長江につながる江南河を築いたので、この地は大運河の終点となり、交通・商品流通の拠点となった。またこの地は日本からの遣隋使遣唐使の上陸地点でもあった。

南宋の都臨安となる

 靖康の変で北宋が滅亡した後、南宋を建てた高宗がこの地に逃れ、1138年から都として、臨安または行在(仮の都の意味)と呼んだ。こうして杭州(臨安)は、中国の南半分を支配する宋の都として、政治都市としても重要なところとなった。この時代にはこの杭州と湖州を中心とした浙江省は、隣接する長江下流の江蘇省(その中心は蘇州)とともに中国で最も穀物生産の豊かな地域となり、「蘇湖(江浙)熟すれば天下足る」と言われた。

元代の杭州 キンサイ

 臨安府は1276年に軍によって占領され、南宋は滅亡する。元代にはこの地は杭州と言われるようになり、都としての地位は失ったが、浙江省の省都として繁栄を続け、豊かな経済力を背景に大都市として発展を続け、広州泉州などと並んで外国貿易の拠点ともなった。
モンゴル軍の杭州占領 1276年、南宋の首都杭州は、バヤンの率いるモンゴル軍に無血開城した。杭州城内外には約40万の南宋軍あったが、南宋政府は無条件降伏を決定し、抵抗しなかった。一部の下級兵士が、失職を恐れて政府に対する暴動を起こしたが、南宋政府軍幹部によって抑えられ、その一部が南宋帝室の幼子二人を伴って脱出し、再起を期して南に向かった。フビライの言明によってモンゴル軍は厳しく統制され、略奪行為などは起こらなかった。中華文明の花咲く杭州が、蛮族モンゴルに蹂躙された、というのは間違った先入観であり、実際には杭州はモンゴル人支配のもとで商業都市としてさらに繁栄している。<杉山正明『クビライの挑戦』1995 講談社学術文庫版 p.25->

マルコ=ポーロの滞在

 元の フビライの宮廷に仕えた、ヴェネツィア出身の商人マルコ=ポーロも杭州に滞在し、世界最大の都市と賞賛している。その著作『東方見聞録(世界の記述)』ではキンサイと書かれているのは、杭州が南宋の都(臨安)となったが、公式には一時的な皇帝の滞在地、つまり行在所(あんざいしょ)といわれていたためであり、「あんざい」をキンザイと書いたのである。

参考 マルコポーロの伝える“キンサイ”の繁栄

 マルコ=ポーロは「そもそもこのキンサイ市というのは、まちがいもなく世界第一の豪華・富裕な都市だから、全くもって話しがいがあるというものである。」と述べた上で、かなりくわしくキンサイつまり杭州について書かれている。それによれば、城内には広い街路と運河がはしり、広場がいたるところにある。運河・水路にはたくさんの橋が架かる。一週間に三度、どの街区でも市場が立ち、あらゆる獣肉、魚などが集まってくる。
(引用)主要十街区では、どこも高楼が櫛比している。高楼の階下は店舗になっていて、そこでは各種の手芸工作が営まれたり、あるいは香料・真珠・宝石など各種の商品が売られている。米と香料で醸造した酒のみを専門に売る店もある。この種の高級店舗では品物が常に新鮮でかつ安価である。<マルコ=ポーロ/愛宕松男訳注『東方見聞録』下 東洋文庫 p.63>
 このほかに、たくさんの街娼がいて豪奢な暮らしをしているとか、医師や占星師の街などがあったことなど、興味深い情報を伝えている。また、キンサイの市民については次のような観察をしている。
(引用)きっすいのキンサイ市民は、平和を愛好する歴代君主の教化をこうむって、その人となりがきわめて温和である。彼らは武器を扱うこともできないし、これを収蔵することもしない。彼らが互いに口げんかをしたり激論するのを目撃し、もしくは伝聞することもまずないことである。彼らは正直誠実で、もっぱら商取り引きにはげみ手工業に精を出す。男も女も善意のありったけを尽くして、誰とでも隣人のように親愛し合うから、市内の全域がまるで一家族ででもあるかのような観を呈している。・・・<同上書 p.70>

明代の杭州

 明代にはいると、杭州は、江蘇省の蘇州と共に絹織物の産地として繁栄するようになった。養蚕業が産業の主体となったため、作物は穀物から桑に変わり、周辺農村は桑畑に転換した。その結果、穀物生産は長江中流の湖北・湖南に移り、「湖広熟すれば天下足る」と言われるようになった。
印 刷
印刷画面へ
ノートの参照
第6章2節 ウ.宋の統治
第6章3節 イ.元の東アジア支配
書籍案内

杉山正明
『クビライの挑戦』
1995 講談社学術文庫

マルコ=ポーロ
/愛宕松男訳柱
『東方見聞録』(2)
平凡社ライブラリー