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ブハラ

カラン=ミナール
ブハラのカラン=ミナーレット。
チンギス=ハンの破壊を免れた。

西トルキスタンの古都でサーマーン朝の都。イラン=イスラーム文化の中心地であった。16世紀以降ウズベク人が進出し、ブハラ=ハン国の都となる。

 中央アジアの西トルキスタン(ソグディアナ地方、現在のウズベキスタン)にある歴史的都市。ボハラ、ブハーラーとも表記。はじめはソグド人の商業都市として栄え、8世紀からイスラーム勢力が伸張してきて、9世紀の末にはイラン系サーマーン朝の都となった。以後、イラン=イスラーム文化の中心地の一つとなり、イブン=シーナーもこの地で学んだ。1220年にチンギス=ハンに征服され、市街は破壊されたが、ティムールによって再興された。ティムール朝が分裂し、ウズベク人がかわって進出し、1500年にシャイバニ朝が成立した。シャイバニ朝でブハラは再び都とされ、その後のウズベク人の諸王朝であるジャーン朝(1599~1753)・マンギト朝(1753~1920)の三王朝を総称してブハラ=ハン国という。ブハラ=ハン国は1868年、南下したロシアによって保護国とされたが、ブハラはロシア統治下でのトルコ民族主義運動であるジャディードの中心地ともなった。ロシア革命後の1920年に、いわゆるブハラ革命でブハラ=ハン国は滅亡し、1924年にウズベク社会主義共和国としてソ連の一部となった。ソ連邦崩壊後の1991年からはウズベキスタン共和国に属しているが、住民にイラン系のタジク人が多いことから、東隣のタジキスタンはその併合を求めている。

イスラーム文明の中心地

 古都ブハラはザラフシャン川下流の豊かな耕地に恵まれ、東北のサマルカンドからフェルガナ方面、東南のメルヴからイラン方面、西北のヒヴァからホラズム方面、西南のテルメズからアフガニスタン方面などを結ぶ交通の要衝であった。8世紀の初めクタイバ=ブン=ムスリムの指揮するアラブ軍がイラン系ソグド人の住むこの都市を征服して以来、中央アジアのイスラーム文明の中心として「ブハーラーイ・シャリーフ」(聖なるブハラ)と呼んだ。ブハラのマドラサ(メドレセ)にはイスラームの学問を修めようと多くの人が集まり、ウラマーの講義を聴き、神学・法学・哲学・医学・歴史学などの諸学問を研究した。ブハラ出身の学者として最も高名なのはアル=ブハーリー(810~870)、イブン=シーナー(980?~1037)である。ブハラはまた、イスラーム全域に広がった神秘主義教団ナクシュバンディー教団の創始者バハー=ウッディーン=ナクシュバンド(1317~89)の墓廟があるところから多くの巡礼者を集めている。

ブハラの大学

(引用)「大学の成立」(ヨーロッパでは12世紀ルネサンスの一つの要素とされている)も、ひょっとしたらアラビアから刺激を受けたものではないか、と私は推測しています。大学の先駆的形態はもっと前にアラビア世界にありました。一番早いのは、おそらく10世紀にブハラに出来たものでものでしょう。有名なアラビアの哲学者イブン・スィーナーはそこで学びました。ブハラというのは、ずっと東のほう、いまのトルキスタンあたりですね。そこは当時決して辺境ではなく、文化の中心地でした。そこに最初の大学ができました。大学といっても、回教寺院の付属学校であって、それがやがて大学になってゆくわけです。その前にはサンガとよばれる僧侶たちの修練場のようなものがインドにあり、ブハラの学校はその影響でできたのではないかと言われています。とにかく、ヨーロッパにおいても聖堂付属の学校というものがあり、それが分離して大学になっていくのですが、そういうことをイスラムでは一歩先にやっており、大学の成立も、イスラム文明の西漸と関係があるかも知れません。<伊東俊太郎『十二世紀ルネサンス』2006 講談社学術文庫 p.47>

世界遺産 ブハラのイスラーム建築群

 先ず注目されるのが、中央アジア最古のイスラーム建築とされるイスマイル・サマーニー廟である。サーマーン朝の君主の墓廟で日干し煉瓦を積み上げただけであるが、精密な装飾を施している。中心部には多くのウラマーを輩出したミリ=アラブ=メドレセと巨大なカラーン=モスクとミナレット、ティムール朝時代のウルグベク=メドレセなど、多くのモスクとメドレセが建ち並んでいる。カラーン=ミナレットは、その前で帽子を落としたチンギス=ハンが、自分が頭を下げたミナレットなので破壊せずに残したという。町の西側にはブハラ=ハン国の王の居城だったアルク城の城壁と内部がそのまま残されており、ハンの豪勢な暮らしを忍ぶことが出来る。また市街地にはタキという十字路をドームで覆ったバザールが現在も何カ所か残っていて、名産の絨緞やハサミ、ミニアチュールなどの工芸品を売っている。
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第5章1節 エ.イスラーム帝国の分裂
世界史の旅
ブハラ