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メコン川

インドシナ半島を貫流する、東南アジア最大の河川。ベトナム南部に広大な三角州を形成している。中流にはカンボジア、ラオスがあり、それぞれ地域国家が形成され、19世紀にはフランス植民地とされた。

 チベット高原の奥地の源流から発し、中国の雲南地方からインドシナ半島に入り、上流はミャンマーとラオスの国境となり、さらにほぼラオスとタイの国境を流れ、下流ではカンボジアを貫流してベトナムのコーチシナ地方に入り、河口に広大なメコン=デルタを作っている。インドシナ半島最大の河川。ラオスのビエンチャン、カンボジアのプノンペンはいずれもメコン川流域にある。ベトナムのホー=チ=ミン市(旧サイゴン)はメコンデルタからは北東に離れている。
 下流のカンボジアからベトナム南部にかけては、かつて扶南が栄え、7世紀に興ったクメール人のカンボジア王国に滅ぼされた。14世紀に中~上流にラオ人のランサン王国が成立し、ルアンプラバンを都に栄えたが、18世紀に西のタイと東のベトナムに侵略され衰えた。

フランスのメコン川流域進出

インドシナの主な川
 19世紀にインドシナに進出したフランスは、ベトナム・カンボジアと併せてラオスを植民地化し、フランス領インドシナ連邦として植民地支配を行った。フランスの狙いは、メコン川をさかのぼって中国との貿易ルートを作ろうというものであったが、メコン川にはラオス南部に瀑布地帯があり、大型船舶が遡上できなかいため、その計画は不発に終わった。

出題

2011年 龍谷大 第2問 問1 メコン川の位置として正しいものを,右の図の中から一つ選びなさい。

解答


メコン圏の地域協力

 1992年に始まった「メコン圏」構想は、メコン川流域に位置するインドシナ半島の5つの国と中国雲南省が協力して経済発展をめざすものであった。この圏内の諸国ではベトナム、ラオス、カンボジア、ビルマは長く戦乱や経済的停滞が続いていたので、タイが先進国としての地位を占めていた。そのためタイがメコン圏の地域協力構想に最も積極的に関与していた。その基盤整備として国際交通網の整備が進められ、雲南の昆明とバンコク、ハイフォン(ベトナム)をそれぞれ結ぶ南北回廊、ミャンマーのモールメインとベトナムのダナンを結ぶ東西回廊、バンコクとホー=チ=ミンを結ぶ南回廊が高速道路で結ばれることになった。これらの事業のタイ以外の地域ではタイの無償資金協力で進められた。2000年代に入り、タイのタクシン政権は積極的な経済開発を進めたが、このメコン圏構想もタイの経済進出に利するだけではないのかという、反発も起こった。タイ経済の「オーバープレゼンス」は、かつて1970年代に日本経済の東南アジア進出が強い反日感情を生んだように、カンボジアやラオスで高まっており、それが2010年のタイ女優のアンコール=ワットについての発言をきっかけにおこったカンボジアのプノンペンでの反タイ暴動や、国境紛争の発生などの背景となっている。<柿崎一郎『物語タイの歴史』2007 中公新書 p.271-277>