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フランクリン

アメリカの科学者で避雷針の実験などで有名だが、実業家でもあり、アメリカ独立運動の指導者のひとりでもあった。独立宣言の作成にも加わり、独立戦争中は駐フランス大使として活躍した。

 ベンジャミン=フランクリン Benjamin Franklin 1706~1790 は、1752年、凧の実験で雷の正体が電気であることを証明したことで有名。雷雨の中、針金をつけた凧を揚げたところ、針金が電気を引き、凧糸が毛羽立ち、凧糸の下に取り付けた鍵を通してライデンびん(蓄電池が発明される前の電気を蓄える装置)に電気を蓄えることができた。雷が電気であることを証明したフランクリンは、建物を雷から守る避雷針を発明した。
 ボストンの貧しい職人の子として生まれ、フィラデルフィアに出て印刷出版業として成功したひとであり、その『フランクリン自伝』も広く読まれている。フィラデルフィアには彼の住居が記念館として残っている。

ピューリタンの精神

 フランクリンは“時は金なり” Time is Mony という格言で知られる。この言葉は彼が1748年に発表した『老人から若い商人への忠告』の中で云った言葉であるが、それは単に勤勉に働けという商人としての教えなのではなく、厳格なピューリタン(清教徒)の信仰から来た思想である。ピューリタンはイギリス国教会の国王を頂点とする教会組織に刃向かい、教会の権威ではなく聖書の教えのみに従い、神から与えられた現世の生活を少しも無駄にせず過ごさなければならない、と教えていた。彼が生まれたボストンのあるマサチューセッツはピューリタンが入植したニューイングランドの中心地であり、その精神の中で育ったのだった。彼は『貧しいリチャードの暦』(1733年)では“失った時間は決して戻ってこない”とか“遅延は時間の泥棒である”とも言っており、また時間を有効に使おうとして夏時間の導入を思いついたともいう。<ジェームス・バーダマン『ふたつのアメリカ史』2003 東京書籍 p.20>

アメリカ独立革命の指導者

 フランクリンは避雷針の実験で有名であるが、科学者としてだけではなく実業家としても活躍し、またアメリカ独立革命の指導者のひとりとしても重要な人物であった。哲学協会の設立、奴隷制反対協会の設立(1775)などの活動の他、アメリカ独立戦争が始まると第2回大陸会議に参加してアメリカ独立宣言起草委員の一人に選ばれた。独立戦争中の1776年から85年までアメリカ大使としてフランスに駐在し、フランスの参戦と経済支援を取り付けた。それによってアメリカはイギリスからの独立の戦いを優勢に転換させ、1783年にパリ条約で独立を実現させた。帰国後はペンシルヴェニア州知事を務め、また憲法制定会議にも参加した。憲法制定に当たっては、連邦派と反連邦派を調停する役割を担った。

Episode 独立宣言はどんな紙に書かれたか

 ベンジャミン=フランクリンははじめてイギリスから錫製のバスタブを輸入し、避雷針や二重焦点メガネ、効率的な住宅用ストーブを発明し、自慢の種には事欠かない人物だ。ボストンの敬虔な夫婦の間に10番目の息子として生まれ、アメリカ最初の新聞の一つニュー・イングランド・クーラントを創刊し印刷出版していた異母兄弟ジェームズのもとへ見習いに出された。しかし兄との関係がきまずくなり、フィラデルフィアへ向かった。17歳のベンジャミンの手もちの金はオランダ・ドル1枚だけだったが、印刷出版業で順調に業績を伸ばすことができた。42歳になって印刷出版業にけりをつけ、行政や外交、科学そして菜食主義に専念した。
(引用)アメリカ革命までの30年間、イギリスの貿易制限に端を発し、両国の関係には不穏な空気が漂っていた。アメリカは数ある輸入品の中でも紙の原料をイギリス産のパルプに頼りきりだった。この状況にやきもきしていたフランクリンは、自社の印刷工場でパルプの代わりにアサを利用する方法を思い立った(ジョージ・ワシントンとトマス・ジェファソンもみずからアサのプランテーションを経営していた)。独立宣言を起草したときには、フランクリンの工場で生産されたアサの紙に書かれたことはまずまちがいない。<ビル・ローズ/柴田譲治訳『図説世界史を変えた50の植物』2012 原書房 p.36>
 合衆国史上、最も有名な文書である独立宣言は、十中八九ベンジャミン・フランクリンの製紙工場で生産されたアサ紙に印刷されたものだ。しかし、現在ではアサ紙が全紙パルプ生産に占める割合はごくわずかになっている。 → の項を参照。

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書籍案内

フランクリン
/松本愼一・西川正身訳
『フランクリン自伝』
初版 1957 岩波文庫

ビル・ローズ/柴田譲治訳
『世界史を変えた50の植物』
2012 原書房