聖職者基本法
1790年7月、フランス革命で国民議会が制定した、教会の国家管理を定めた法律。聖職者民事基本法ともいう。教会を国家管理下に置くもので、司教・司祭などの聖職者はこれに従う宣誓を強要された。
フランス革命の教会政策
フランスにおけるカトリック教会は、ローマ教皇と直接結びつくことが多かったので、王権には常に厄介な存在であった。絶対王政も教会を国家のコントロール下に置こうと苦慮していた。フランス革命では人権宣言第10条で宗教上の意見でおびやかされない、と宗教的寛容を謳ったが、聖職者の特権身分としての権威と権力は奪い取らなければならないと考えられた。カトリック教会に対する具体的な措置はまず、1789年11月に国民議会が教会財産の没収=国有化、およびそこで得られた国有財産を担保とするアッシニアの発行を定めたところから始まった。その際、修道院の修道僧には離脱する自由を与え、一般の聖職者は国家公務員として俸給をあたえることとした。
聖職者基本法の制定
1790年7月12日、国民議会は聖職者基本法(聖職者民事基本法、または僧侶基本法)を定め、聖職者の任命は選挙によること、教会組織は行政区画に従うこと、特殊な聖職者団体は廃止することとした。その上で、議会はフランスのすべての聖職者にたいして、憲法及び聖職者基本法を守る誓約を求めた。ローマ教皇はこの教会を完全に国家が統制しようとする基本法を非難する親書を発表、フランスの聖職者は、宣誓僧侶と忌避僧侶とに分裂し、聖職者間の陰惨な対立が始まった。民衆は忌避僧侶を迫害し、忌避僧侶は貴族と結びついて反革命の陰謀に走った。<河野健二『フランス革命小史』1959 岩波新書 p.104>