水晶の夜
1938年のナチス=ドイツで起こったユダヤ人排斥事件。ドイツ全土でユダヤ人商店などが襲撃、破壊された。
The day after Kristallnacht
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(引用)1938年11月7日、ポーランド系ユダヤ人の17歳の若者H・グリュンシュパンは、両親がナチスによりドイツからポーランドへ強制輸送で追放されたことを知って、パリでドイツ大使館付書記官E.V.ラートを狙撃し、重傷を負わせた。ヒトラーは11月8日のミュンヘン一揆記念日のためにミュンヘンに来ていた。9日にはゲッベルスもミュンヘンに駆けつけた。9日夜会食中のヒトラーとの席にラートの死が伝えられた。ゲッベルスは当時チェコの女優リダ・バーロヴァとのスキャンダルでヒトラーの顰蹙をかっていたので、彼の機嫌を取り戻すよいチャンスと考え、ヒトラーと二人だけでうちあわせをし、ただちにユダヤ人に対する報復行為開始を指示した。その結果、11月9日夜から11日にかけ、全国で大迫害が起こり、7500に及ぶユダヤ人住居、商店、デパートなどが破壊掠奪され、数百におよぶシナゴーグ(会堂)が破壊放火され、また数百近いユダヤ人が殺され、有産者を中心とする3万人近くが逮捕され、強制収容所へ送られたのである。ラートの出身地フランクフルトでは特にひどく、市内の5つのシナゴーグはすべて焼き払われた。」<大澤武男『ヒトラーとユダヤ人』 講談社現代新書 P.158-162>→ ホロコースト
NewS 「二度と繰り返さない」ドイツ首相が表明 2023/11/9
1938年にドイツで起きたユダヤ人迫害事件「水晶の夜」から85年目を迎えた2023年11月9日、ベルリンのシナゴーグ(ユダヤ教の会堂)で追悼式典が行われ、オラフ・ショルツ首相は「二度と繰り返さない」と述べ、ユダヤ人保護を改めて表明した。これは2023年10月7日に起こったガザ地区のイスラーム原理主義集団ハマスによるイスラエルに対する攻撃から「反ユダヤ人主義」(反ユダヤ主義)が高まることに警鐘を鳴らしたものである。シュルツ首相は反ユダヤ主義のたかまりを「国辱」と表現したが、これは現在のドイツ国内でも一部にドイツ人の優越を強調し、ユダヤ人を排斥する主張が現れていることに危機感を持っていることを示している。 → AFPbbニュース 2023/11/11 記事
一方、国連人権理事会(UN Human Rights Council)は9日、スイス・ジュネーブでドイツについての普遍的定期的審査(UPR)を実施した。そこではドイツが、イスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)の紛争について、イスラエル支持を明確に打ち出す一方、国内でパレスチナ支持派の抗議活動を禁止していることに対し、主にイスラム教国から非難が相次いだ。それに対してドイツ代表は、イスラエルの反撃は自衛権の行使であって容認すべきであり、パレスチナ支持派のデモはテロ行為という犯罪を称賛する内容は制限されるべきである、と主張した。それに対してイスラエル代表は賛意を表し、ヨルダンなどアラブ諸国は不満を表明した。 → AFPbbニュース 2023/11/11 記事
ここには「歴史」と「現実」の二面性に悩むドイツ政府の苦悩が見られるが、ドイツだけではない、西欧世界が抱えている矛盾ということもできる。<2023/11/12 記>