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大航海時代

15~17c、ヨーロッパ人によるインド航路や新大陸到達などによって、世界の一体化が進んだ時代。ポルトガルとスペインが先鞭を付け、当時形成されつつあったヨーロッパの主権国家、オランダ、イギリス、フランスが続いて海外進出を進めた。背景には香辛料貿易の利益の拡大を求める北イタリア商人の商業活動、同時期に展開されたルネサンスによる新たな知識・技術の獲得、宗教改革によって窮地に立たされたカトリック教会の布教願望などがあった。このヨーロッパ勢力による大航海の展開はアフリカ、アジア、南北アメリカ新大陸への進出の始まりであり、それらの地域にも大きな変動をもたらし、中世から近代への移行期(現在の時代区分では「近世」と捉えられている)となった世界史的な動きであった。

 15世紀から16世紀にかけて展開され17世紀の中頃まで続く、ヨーロッパ諸国による新航路や新大陸の発見は、かつては「地理上の発見」という言い方をされたが、現在はそのようなヨーロッパ側に立った言い方をさけ、「大航海時代」とか「ヨーロッパ世界の拡大」とった言い方をする。いずれにせよ、ヨーロッパ勢力のアジアやアフリカ、南北アメリカの新大陸への進出が始まったことには違いなく、ほぼ時期的に重なるルネサンスおよび宗教改革とともに世界史上に大きな転換をもたらしたということができる。
 大航海時代は、まずポルトガルによるアフリカ西海岸進出に始まり、インド航路開拓に成功し、それに対抗したスペインが、思いがけずアメリカ新大陸を「発見」、さらにマゼランの世界周航でピークに達した。それ以後は、主としてポルトガルによるインド・東南アジア進出、スペインによるアメリカ新大陸の支配が展開される。17世紀以降はオランダ、イギリス、フランスが主権国家体制(絶対主義)を完成させて、重商主義にたつ勢力圏獲得に乗り出すようになった。この段階では18世紀以降の資本主義、さらに19世紀末からの帝国主義段階のような直接的植民地支配を目指したものではなく、「経済的勢力圏」を拡張する動きであったが、次第に領土的支配を強めてゆき、上記諸国は激しく争うこととなり、次の段階で植民地支配をめざすこととなる。 → 植民地(帝国主義時代)

大航海時代の要図

大航海時代地図

大航海時代

・主要な地名
  • a リスボン  
  • b パロス  
  • c セウタ  
  • d アゾレス諸島  
  • e ヴェルデ岬  
  • f 喜望峰  
  • g カリカット  
  • h ゴア  
  • i サンサルバドル島  
  • j マゼラン海峡  
  • k マニラ  
  • l モルッカ諸島  
  • m テノチティトラン  
  • n クスコ  
  • o ポトシ銀山  
  • p アカプルコ  
  • q ソファラ  
  • r モザンビーク  
  • s モンバサ  
  • t マリンディ  
  • u マラッカ  
  • v マカオ  

・主要な航路
  • A ディアス(1487~88)  
  • B コロンブス(第1回 1492~93)  
  • C カボット(1497,98)  
  • D ヴァスコ=ダ=ガマ(1497~99)  
  • E アメリゴ=ヴェスプッチ(1499~1500、1502)  
  • F カブラル(1500)  
  • G マゼラン(とその船団)(1519~22)  
  • H トルデシリャス条約による東西分界線(1494)

大航海時代の要因

 この時期に、この両国によって「大航海時代」が開始されたことの要因、または背景としてあげられることは次の4点である。
  1. ヨーロッパにおけるアジアに対する知識の拡大(13世紀のモンゴルの侵入、マルコ=ポーロなどによる)
  2. 羅針盤・快速帆船・緯度航法など、遠洋航海術の発達
  3. ヨーロッパでの肉食の普及にともなう香辛料の需要の増大
  4. レコンキスタが進行して、キリスト教布教熱が高まっていたこと
外的な要因 上の4項目は大航海時代が始まったヨーロッパ内部の要因でもあるが、外的要因としては、この時期に小アジアに興ったイスラーム教国であるオスマン帝国がバルカン半島・東地中海・西アジアに進出し、従来のイタリア商人による東方貿易に不利な状況が生まれたことがあげられる。東方貿易が途絶えたわけではないが、ヨーロッパの商人たちは、より直接的に香辛料などをアジアから輸入するためのルートを開拓する必要に迫られたという背景もあった。

大航海で活躍した航海者

大航海時代の影響

 この動きはインドなどアジア諸国と、アメリカ新大陸の現地人に大きな変化をもたらしただけでなく、ヨーロッパ本土にも大きな変革が生じた。商業革命価格革命がおこり、西ヨーロッパの商工業の発展と人口増加にともなって東ヨーロッパでは西ヨーロッパ向けの穀物生産に産業が特化して、農奴制が逆に強化されて半辺境化し、また新大陸のインディオに対してはスペインのエンコミエンダ制による強制労働が課せられて辺境化する、という世界的な「分業化」が進むこととなった。このような「近代世界システム」の成立を16世紀の大航海時代に見いだすことができる。大航海時代によってもたらされた「世界の一体化」とは、このような「世界分業システム」の成立と言うことであった。 → 資本主義的世界経済
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書籍案内

ボイス・ペンローズ
荒尾克己訳
『大航海時代』
2020 ちくま学芸文庫

青木康征
『海の道と東西の出会い』
世界史リブレット25
1998 山川出版社