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半島統一戦争

前4~前3世紀、都市国家ローマがイタリア半島を統一した戦争。重装歩兵として参加した平民の発言力が強まり、ローマ共和政の形成が進んだ。前290年頃までに半島中部を征服し、前272年のタレントゥム征服で半島全域制覇を完了した。続いて海外領土獲得へと向かうが、その結果ローマ共和政を支えていた重装歩兵市民団は分解し、前1世紀を経て帝政へと転換する。

半島統一戦争
紀元前3~2世紀 ローマのイタリア半島統一
 都市国家として出発したローマは、前4世紀中ごろから前3世紀後半にかけて、イタリア半島全域に支配を及ぼし、その過程で平民によるローマ共和政を完成させた。半島統一戦争は、ラティウム都市制圧→サムニウム戦争→ギリシア人植民市制圧の三段階で展開された。
注意 ローマの共和政の形成と、イタリア半島統一とが並行していることが重要。 教科書ではローマ共和政の成立と半島統一戦争が別に説明されているが、両者は同時に並行して進行していることを意識しておこう(下掲)。

半島統一戦争の過程

イタリア半島中部の征服
  • ラテン同盟戦争(ラテン人戦争) 前340~前338年 ラテン人とはローマもふくむイタリア人の一派で、ティベル川流域のラティウム平原に居住し都市を形成した。そのひとつであったローマを中心にして対等な都市同盟としてラテン同盟(前493年)を結成したが、しだいにローマが強大になると他のラテン同盟市との対立が生じ、前338年までにローマはラテン同盟市を武力で制圧した。ローマに服属したラテン人はローマ市民権をあたえられ、ラティウムはローマの行政区画に編入された。
  • サムニウム戦争 第1次が前343~341年、第2次が前326年~前321/316~304年 第3次が前298~290年 サムニウム(サムニテス)人は半島の中部(カンパニア)から東南部にかけて牧畜を主体に山地で生活していたイタリア人の一派。第1次でローマはサムニウム人の内紛に乗じてカンパニアに進出した。そのローマの強大化を恐れてラテン同盟市が反発し、ラテン同盟戦争となった。第2次ではローマは中部山岳地帯のサムニウム人に攻勢をかけ、アッピア街道を造って征服を進めた。第3次はエトルリア人、ガリア人などをまきこむ大戦争であったが、ローマは重装歩兵部隊の力で勝利を占めた。
イタリア半島南部の征服
  • ギリシア人植民都市の征服 前282~272年 イタリア南端には古くからのギリシア人植民市マグナ=グラエキアと言われて栄えていたが、ローマはその制圧にのりだし、その中心のタレントゥム前272年に攻略しイタリア半島の統一を完成させた。
  • ピュロス戦争 前280~275年 タレントゥムが援軍を依頼したギリシアのエペイロス王ピュロスの軍と戦った。ローマは苦戦のすえ、勝利した。この時はローマはカルタゴの支援を受けた。
 なお、北イタリアのポー川流域がローマ領となったのは、第1次ポエニ戦争のあとだった。

征服地の統治

 ローマは征服したイタリア半島の土地に市民権を持つローマ市民を入植させて植民市を建設したほか、降伏した都市には、自治権と一定のローマ市民権を与えた自治市や、自治・市民権を認めず同盟関係を強要した同盟市などの区別を設け、それらの都市が互いに同盟できないように、「分割統治」という方法で支配した。前3世紀中期からはローマの勢力は海外に向かうこととなり、カルタゴと衝突、ポエニ戦争となる。

半島統一戦争の背景と影響

 半島統一戦争の時代のローマでは、前367年のリキニウス・セクスティウス法成立によって平民と貴族の身分闘争が終わり、平民が武器を自弁して重装歩兵として戦闘の主力となる態勢ができあがったことが重要である。前343年に始まるサムニウム人との戦争、前340年に始まるラテン同盟都市との戦争などはこの態勢のもとで戦われた。これらとの闘いでローマはイタリア半島中部への支配権を獲得した。
 しかし戦争によって得られた土地の配分は必ずしも平等ではなかったため、戦争で活躍して土地を獲得した平民が財力を貯えて豊かになる一方、戦争に従軍したものの富を貯えることの出来なかった多数の平民は現状に不満を持つようになった。半島統一戦争があらたなローマ社会の分裂の危機を生み出した、と言うことが言える。
ホルテンシウス法と新貴族の出現 この危機に登場したのが、プレブス出身で独裁官となったホルテンシウスであり、前287年にホルテンシウス法を制定して、平民会の決議を国法とすることで平民の政治的権利を平等に認めた。これによって、ローマは分裂を回避し、共和政の基盤を強めることが出来たた。しかし、同時に貴族と同等の権利を得た平民の中には財力を貯えてコンスルや元老院議員などの高官になるものが現れ、彼らは従来の貴族と区別して新貴族(ノビレス)と言われる新たな支配層を形成していった。
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