モガディシュ
アフリカ東岸のソマリア南部の海港都市。ムスリム商人の交易地として繁栄。イブン=バトゥータ、鄭和艦隊も来航。現在のソマリアの首都。1990年代以降内乱の舞台となった。
モガディシュ GoogleMap
インド洋交易
モガディシオ、モガジシオなどとも表記する。アフリカ東岸でムスリム商人が進出し、交易地として栄えた。アフリカ東岸一帯は、スワヒリ語を使用する文化圏であるが、モガディシュはスワヒリ文化圏の最北に位置する海港都市である。14世紀にはイブン=バットゥータが来訪したことが『三大陸周遊記』に記されている。また、15世紀の明の鄭和艦隊の分遣隊がやって来たが、中国資料には「木骨都束」とされているのがモガディシュであるとされている。
1498年にヴァスコ=ダ=ガマがインド航路の開拓に成功すると、ヨーロッパとアジアを結ぶ喜望峰経由のルートによる東西交易が活発になり、モガディシュも中継基地の一つとなった。戦国時代の日本のキリシタン大名がローマ教皇のもとに派遣した天正少年遣欧使節の一行は、帰途の1587年3月、アフリカ東岸のモザンビークからインドのゴアに渡ろうとして嵐に合い、モガジシオ(モガディシュ)に吹き戻されて12日間停泊し、5月にようやくゴアに着いた。
このように、インド洋に面し、アフリカの南部と北部、アラビア半島、紅海、インドともつながっているモガディシュは、インド洋交易圏の重要な海港として栄えたと言える。
ソマリア内戦
モガディシュは、1960年に独立したソマリアの首都であるが、1991年から深刻なソマリア内戦が勃発し、モガディシュでも激しい戦闘が行われている。特に1993年、アメリカの特殊部隊が、反政府勢力の幹部の保革を狙ってヘリコプターで降下したところ、反政府軍民兵に攻撃されて失敗し、多くの犠牲を出した「モガディシュの戦闘」があった。ソマリア内戦は現在も解決の見通しが立っていない。参考 モガディシュからの脱出劇
2021年に公開された韓国映画「モガディシュ 脱出までの14日間」は、1990年のモガディシュでバーレ独裁政権を倒すクーデタが発生したときに駐ソマリア韓国大使が官邸に孤立、同じように脱出できなかった北朝鮮大使館員と協力して危機を脱出するというドラマで、韓国でヒットした。政治的には対立し、互いの存在さえ認め合えない北と南の人間が内戦下のモガディシュで心を通わせることになる。映画はスリルと暴力の連続する活劇だが、ソマリア内戦の様子と南北朝鮮の外交官の苦悩も描かれており、感心させられた。