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モザンビーク

アフリカ東南部の旧ポルトガル植民地。1975年に独立したが、南アの白人政権の介入を受け内戦が続いた。

モザンビーク GoogleMap

アフリカ東南部、マダガスカル島の対岸の海岸にあるのがモザンビーク島で、早くからインド洋交易の拠点となっていた。8世紀以降はインド洋を経由したイスラーム商人の活動が及んできて、イスラーム化が進み、スワヒリ語も用いられるようになった。海岸部のスワヒリ語系部族は、内陸のショナ人(バントゥー語系)の現在のジンバブエに栄えていた黒人王国から象牙や金を得る交易活動を行っていた。

ポルトガルの植民地支配

 1497年、ポルトガルヴァスコ=ダ=ガマ船団の到来したときは砲撃を受けたがその上陸を許さなかった。その後、インド航路を開発したポルトガルはアラビア海のムスリム商人の一掃を図り、アルメイダの指揮する艦隊を派遣、1507年にモザンビーク島に要塞を建設、その植民地支配を開始した。以来、ポルトガルの植民地支配を受け、そのアジア交易の中継地の一つとして存続した。

Episode 日本の天正少年使節のアフリカ逗留

 ポルトガルが支配していた時代のモザンビークにアフリカにおける日本人の最初の足跡がある。天正少年使節の伊東マンショ、千々石ミゲルら4人だった。1582年に長崎を発ち、ローマに達して教皇らに謁見した彼らは帰路、1586年9月1日にモザンビーク港に到達した。一行は食料などを調達した後、インドのゴアに向かおうと出帆したが、順風が得られず、翌年3月まで約半年モザンビークに逗留した。3月15日にゴアに向けて出航したが、途中で風向きが変わり、大陸側のモガディシオに押し戻され、12日間滞在した後、5月29日にゴアに到着した。<宮本正興+松田素二編『新書アフリカ史改訂版』2018  講談社現代新書 p.248-249>

アフリカ分割

 19世紀末、ヨーロッパ資本主義列強が植民地支配を拡大しようとしてアフリカに進出するようになり、特にアフリカ侵出の後発国だったベルギーのコンゴ地方進出をめぐって国際紛争となり、1885年にその調停のためドイツのビスマルクが仲介してベルリン会議が開催された。そのときモザンビークは「ポルトガル領東アフリカ」として認められた。帝国主義諸国によるアフリカ分割の中で、ポルトガルが大航海時代からアフリカ植民地の確保が認められ、モザンビークとアンゴラなどの領有する植民地帝国になった。
 その後もこれらのアフリカ殖民地は本国ポルトガル経済を支え続け、第二次世界大戦後の1951年にはポルトガルの海外州とされるようになった。そのためモザンビークは独立後もポルトガル語を公用語としている。

独立が遅れる

 第二次世界大戦後もモザンビークはアンゴラなどとともにサラザール体制下のポルトガル本国の厳しい植民地支配を受け、独立国が多数誕生したアフリカの年(1960年)でも独立できなかった。1965年からモザンビーク解放戦線(FRELIMO)による独立闘争が始まると、本国のポルトガルでも独裁政治が行き詰まり、1974年のポルトガル革命が起こって独裁体制は崩壊した。ポルトガルの新政権には、翌年にアンゴラなどとともにモザンビークの独立を認めた。

モザンビーク内戦

 独立後の歩みはけして平坦ではなかった。まず、ローデシア・南アフリカの白人政権は、隣接するモザンビークとアンゴラに黒人独立国家ができたことによって、アパルトヘイトをつづける白人支配が動揺することを恐れ、介入を開始した。1980年にローデシアの白人政権が倒されてからは南アフリカ共和国がモザンビークに介入し、新政府を転覆させようする右派勢力に軍事支援をつづけた。そのためモザンビーク内戦が開始されたが、これは部族抗争ではなく白人傭兵による政府転覆活動であり、反政府軍による住民虐殺が猛威を振るった。内戦のため経済成長は遅れ、モザンビークは「世界一の貧困国」といわれた。94年、ようやく統一選挙が実施されたが政情不安は続いている。
南ア介入による内戦の惨状 南アフリカの白人政権に支援されたモザンビークの反政府組織(モザンビーク民族抵抗 RENAMO)は白人傭兵に指導されて盛んに政府転覆活動を行った。そのの中味について次のように報告されている。
(引用)白人傭兵によって訓練されたRENAMOのアフリカ人ゲリラは、子供を誘拐し、学校や病院を破壊し、教員や看護婦を処刑し、乗合バスを満員の乗客もろとも丸焼きにし、収穫に火をつけてまわるなど、各地で暴虐の限りを尽くした。南アフリカの直接・間接の介入が原因で命を落としたモザンビーク人は、1980年代の10年間で100万人に達した。そして、86年にはモザンビーク大統領のサモラ・マシェルが、南アの破壊工作で謀殺された。<『改訂新版 新書アフリカ史』2018 講談社現代新書 p.382>
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宮本正興・松田素二編
『改訂新版 新書アフリカ史』
2018  講談社現代新書